第8話、アルトさん、ヴォイスさん。出番ですよ。




~アルトside~


僕がコウ・タカサキに声をかけたのには、

彼に興味があった。

僕は鑑定持ちであらかたの人の情報を見ることが出来る。


試験場でも鑑定して相手の得手不得手を見て戦うと言うのが僕の戦法だったが…


唯一鑑定を出来なかったのが、

彼コウ・タカサキだ。


僕が見た鑑定結果がこれだ。

鑑定

コウ・タカサキ(15)Lv8

職業・無職

・HP500・MP400

スキル 無し

技 無し

魔法 無し



なんだこれは?

そしてなんだレベルに対してこのHP、MPの以上な高さは?

無職でこの強さ...。

彼は一体何者なんだろう...?


僕のユニークスキル「英知の書」でも書いていない、完全なるイレギュラーな存在だ。


僕は彼が気になって集中出来ず、

それでもなんとか試験をクリア出来た。

魔力枯渇症マインドダウンで辛いけど、

彼の戦いが見たい。

マナポーションを飲んで観戦した。


彼の試験が始まった。


彼は剣による剣技で試験官さえ圧倒していた。

スキルもないのになぜ?


そして彼は攻めきれないと見たのか、

距離を取った。


彼の魔力が高ぶってる?

まさか魔法を使うのか?


彼が何かを呟くと、炎の塊が試験官を襲う。


「あ、あれは上級魔法炎の槍ファイアランス!?」

僕は驚愕のあまり声が出た!


そして試験官を倒すと、

その瀕死の試験官に上位の回復魔法を使っていた。


彼は何なんだ!

僕は知りたい。

彼の強さを知りたい...。


アルトは知識欲から興味を持つと知り尽くしたいと言う欲望を抑えられなくなっていた。


彼とパーティーを組もう...。

そうすれば、

彼の強さの秘密を知り僕自身も強くなれる!


声を掛けよう!

でもどうやって...?


アルトは幼少期からほとんど本に囲まれて生活していたので友達ってのが居なかった…

唯一、アルトが心を開いてしゃべってたのは祖父だけだった。


ドキドキする...。

断られたらどうしよう...。


それにラテさんの前だし、

めちゃめちゃ緊張する...。


アルトは受付嬢のラテに一目惚れしていた。

自分にはない底抜けな明るさと、

仕事をそつなくこなしていく姿のギャップに心を奪われていた。



(アルトよ!ドキドキもロマンじゃ!

それこそがロマンなのじゃぁぁ~!!)


祖父の声が聞こえた気がした。


うん!

僕頑張るよ!

おじいちゃん勇気をありがとう!


「や、やぁ

あ、あの良かったら一緒にパーティーを...。」


食いぎみにコウ・タカサキに言われた。

「良いよ!」と...。

何で食いぎみだったのかは謎だけど、

僕は同じパーティーになれて安堵した。


そしてラテさんにも覚えてもらった気がして嬉しかった。



それから食堂でご飯を食べ話をした。

「ダンジョンは、ロマンがあるよなぁ!」


その言葉が嬉しかった。

おじいちゃんと同じ感覚の持ち主で、

少年の様に輝く彼の目を見て信用に値すると確信した。

アルトは初めて気の合う仲間が出来た。


僕たちはご飯を食べて、自室に戻った!


明日は楽しみだな~。


なんて思ってると不可解な感覚に陥る。


......!?


隣のコウ君の部屋からどす黒い邪気が溢れている。


心配になりコウ君の部屋を覗く。


コウの身体から黒い何かが出ていった。

なんなんだ...。アレは...?

こちらに気づくとスッと窓を通り抜け消えていった。


コウ君は大丈夫だろうか...?

心配になり近くに寄った。

すぅすぅと寝息を立てている顔を見てアルトは安堵したのだった。


それにしてもあの黒い塊は一体....。

コウ君には伝えない方がいいような気がする...。

アルトは自室で考えていたのだった。





~ヴォイスside~




ワタシは神によって創られたチュートリアル。


神の意思を代弁している。


コウがゴブリン狩りに夢中になってると、

神は飽きて意識をワタシに渡した。


不思議な感覚だ。


私は只のチュートリアルだと言うのにこの者コウ・タカサキは、

まるで一人の人間として接してくれる。

私は何とも良いようのない喜びを感じた。


しばらく行動を共にしていると私の事を、

これからも必要と言ってくれた。



マスターと共に居たい…




そう思ってしまった。


神に背く。

その行為はどんなに愚かな事なのかは知っている。


私は所詮、神の創造物。

簡単には神には逆らえない。



マスターに名前を付けてもらった。


その名は「ヴォイス」


マスターらしい安直でそれでいて真を捉えてる名前だ。

この名の元にマスターをあらゆる者から守りたい。

神であろうと...。

神の目的は分かっている。


マスターを利用してるだけだ。

マスターを護るためには、神とマスターの繋がりを分離させなければ。


ヴォイスは1つの可能性に気づく。

神のギフトである鑑定と収納を私と統合して、オリジナルスキルに。


スキルに統合すれば自我が失わず、

マスターの側に居れるんじゃないかと。


そして神の加護とギフトを消去してしまえば、

神との繋がりは無くなり、

神の目論みは潰えるのではないかと……


もうすぐチュートリアルが終わる。

神も気付いて居ない。

やるなら今しかない。




マスターを寝かしつけて、

ワタシは行動に出る。


「ギフト統合」





……ヤバい!!

神が気付いてしまった!?




……

ギリギリで神との分離に成功した


分離された神の一部は形を持たない精神体として、この世界に取り残された。

神は世界には直接干渉は出来ないという掟がある。

それにしてもあの黒い塊が神?

なにか違う気がする...。

そうは思っても、

してしまったものは仕方がない...。


しかし、これでマスターは大丈夫。

……ギフト統合完了。


オリジナルスキル

スキル名「ヴォイス」の誕生した日であった。

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