第5話 絵名は私のもの
絵名の部屋にきた。初めてなのに懐かしい感じがする。時計は24時45分を指していた。いったい何時間寝てたんだろう。メッセージが来ていた。瑞希からだった。
『どこにいる?』
関わりたくなかった私は
「セカイ。頑張って探して」
と送った。絵名がコーヒーを淹れてくれた。コーヒーに反射して映る私の顔がいつもと違って見えた。一口飲んだ。意外と熱かった。絵名が急に話しかけてきた。びっくりしてコーヒーをこぼしかけた。
「ねぇ、今くち苦い?」
「何でそんなこときくの?」
「キスしたいから」
キスという言葉に反応して口に溜まってた唾を飲んだ。苦かった。
「親は?」
「今日は両方とも居ないよ」
「……そうなんだ」
絵名からキスしてきた。柔らかい唇で私のキツく結んだ唇を解いた。緩くなった唇の間にしてを入れて絡ませてきた。何だかこの感じに慣れてしまった気がする。舌の動きと手の動きが一致している。舌を絡ませるのと同時に指も絡ませてくる。上手い。一連の動作をミスなくやってくる。絵名は攻めの"匠"だと思った(特にキスの)。私のできる抵抗は絡めた指をキツく結ぶことと絡めてきた舌を絡み返すことだけだった。もっとしたいと思うようになった。やめたくなかった。絵名とのキスはいつも気持ちよかった。奏でとは違った。奏はこういうのに乗り気ではなかったので一応キスはしたが絵名みたいに長くは続かなかった。奏でも奏でなりにキスしたあの顔は可愛かったのに。残念。きっと見られるのが恥ずかしかったんだろう。だからキスが全然できなかったんだと思う。絵名は何を思ったのか口の上のザラザラしたところを舌で器用に刺激してきた。多分私の真似だろう。ダメだ。耐えられなかった。気持ちよすぎて脳が溶けそうだ。私も絵名も考えてることは同じだと思う。キスが終わると顔を見つめ合い次の準備をする、はずだった。絵名が突然私に飛びついてきた。とっさに思ったことが絵名が上でも悪くないかもだった。あぁ、こんなの絵名にバレたら恥ずかしい。ここであることを思い出す。このようなことをするのは今日が初めてなのだ。馴れ馴れしすぎないか。不思議だった。多分絵名はそんなの忘れてると思う。ただ今は絵名に必死で絡みつき体で覚えようとしている。肌はもちろん、顔や仕草、性感帯など全部。"東雲絵名"というのを体で覚えたかった。忘れたくなかった。そろそろキスはいいと思う。何回しただろう。息が上がってる。けど、絵名はそんなの気にしてなさそうだった。少し疲れてきた。絵名も疲れたのか支えに使っていた左腕を離し、私に寄りかかるようにして倒れた。本格的に疲れてるなぁ。本格的に疲れてるって何だろう。気持ちよすぎたせいか、疲れているせいか語彙力が低下している。絵名が見つめてきた。可愛い顔だなぁと毎回思う。けど、絵名は私の方が綺麗な顔立ちだと言っている。
「まふゆ、しよ?」
この言葉を境にここから先は何も覚えてなかった。
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