第8話 本当の金澤玲奈(上)

「死のうと思ってたんです」

 え…? 死のうと思っていた…というと…?

「玲奈さん、それは…、本気で死のうと思ってたんですか…?

 どうして死のうと思ったんですか…!」

 突然俺が声を張り上げたからか、玲奈さんは少し瞳を開いてびっくりしていた。

「すみません、突然。けど、なんで玲奈さんがそこまで…」

「紘くん、それを今から話すんですよ…?」

 そうだった…。どうやら俺は焦りすぎたみたいだ。

「……あれは小学生のことだったの–––––

 ––私はそれから【わたし】の私になった。もうあんなことが起きないためにね。けど、高校生になった今だんだんと思考も大人になってきた。偽った自分を世間に見てめてもらっても、それは嘘をついているということなの。

 じゃあ【わたし】を捨てればいいと思うかもしれない、それは私も思う。けどね…【わたし】を捨てた時今私の周りにいてくれるみんなはどんな反応をするんだろうかと考えると不安で捨てられなくて。それがつらくて…!」

 玲奈さん…こんなに傷ついていたのか。玲奈さんにそんな悩みがあるとは知らなかった。

 けど、ひどいだろうけど–––

「––玲奈さん、俺は今からあなたに嫌われるかもしれない。嫌われるのは嫌だけど、俺はあなたに言いたいことがある…。

 金澤玲奈さん、今まで俺が見てきたあなたが嘘だったと思うと悲しい。けど、それを話してくれたことを嬉しく思ってる。

 だからこそ言いたい。あなたのいう【わたし】を、捨ててみませんか?」

 これをいうのは間違っているのかもしれない。けど俺は玲奈さんが、玲奈さんとしてみんなに認めてもらいたいから。

 俺のわがままなんだろうけどね。

「紘くん、は、やっぱり優しいんだね。

 じゃあ、とっても自分勝手だけど……。明日、明日ありのままの私を紘くんに見せるよ」


 とは言われたものの、俺は自分がしたことが正解だったのかはわからない。

 これでもし玲奈さんがみんなに認めてもらえなかったら、それは俺のせいだろう。

認めてもらえないと思っているわけじゃないのだが、どうしても不安が残ってしまう。

 不安すぎて学校に早く行ってしまうくらいには。

「もう玲奈さんいるのかな…。

 枯れ桜のところに行ってみるか」

 玲奈さんがいるわけないよなぁ。と、根拠もないことを思いながら枯れ桜に行ってみると、

「あ、おはよう。紘くん。

 新しい私はどうですか?」

 はっきり言って、綺麗だった。

 外見が見た感じ変わったとかじゃなくて、以前よりも輝いていた。

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