第7話 中学三年生

 由依さんが私のことで泣いてくれたあの日から、もう十日たっていた。

 由依さんはあの後私に、

「変わろうよ。今の自分を変えて皆んなが何も言えないようにしよう!」

 びっくりした。私にあんな提案してくる人が、私に手を差し伸べてくれる人がいるなんて思わなかったから。

 私は変わると決めた。

 それからの日々は大変だった。服を買いに行ったり、笑顔の練習、声をしっかり出す練習、話しかけられたらちゃんと返す練習。

 服は二人とも知識がなく、笑顔はできるようになった。少しぎこちなかったができるようになった。

 そんな日々を送っていると、私をいじめていなかった人達に話しかけられるようになってきた。

 それと同時にいじめも少なくなっていって、ついには無くなった。

 卒業する時には友達もたくさんできていた。

 嬉しかった。楽になった。けど、何もなかった。

 たしかにいじめはなくなり友達もできて遊ぶようにもなった。

 そこに【私】はいなかった。みんなに合わせた【わたし】がいた。

 なんか、寂しかった。本当の【私】を出せばまた嫌われそうで、【私】は誰にも求められずに、今の【わたし】が求められる。

 じゃあ、【私】はなんだろう?

「あのさ、由依。私はどうしたらいいと思うかなぁ。私は私を認めて欲しい。けど、みんなはわたしを認めてる。

 もう卒業なんだよぉ……。このままじゃ高校でもこのままになりそうで、怖いの」

「そうだねぇ、もしレイが昔のレイに戻って、みんなに嫌われてしまったらどうするの?」

「それは……受け入れるよ。高校生にもなるし、私は【わたし】じゃなくても大丈夫って思いたいの」

 それから私は【わたし】をやめて【私】になった。みんな離れていった。私みたいなタイプは残ったが、クラスのうるさいタイプはいなくなってしまった。

 寂しさと同時に解放された感じがした。

 少ない友達と楽しみながら卒業を迎えた。

 高校に入った。

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