第6.5話 金澤玲奈 中学二年生

 小学生の頃、私はいじめに遭っていたとてもきつかったが親が気を遣って一年間転勤をなくしてくれた手前、欠席するわけにもいかず、毎日笑顔で通い続けた。

 小学校卒業とともに私は再び転校した。

 中学生になった。

 親はもう転勤はないと言っていたので学校が変わる心配はないだろうが、私は人に話しかけることができなくなっていた。

 小学生の頃のいじめがトラウマになっていたのだ。

 中学一年生は一人で平和に過ごせた。

 中学校二年生でまた私の生活に問題が起きた。

 いつも一人でいるのに、話しかけたらオドオドしてしまう私にイラついた学校でも結構な権力を持った生徒に嫌われてしまい、再び小学生の頃の悪夢が戻ってきてしまったのだ。

 最初は上靴を隠されたり、筆箱が無くなったりした。

 次は教科書に落書きされたり、授業中に集中的に私を当ててきたりした。

 もうその時点で私は限界だったが、親が毎日笑顔で今日何があった? と聞いてくる。

 初めてこんなに長く同じ学校にいるから親も何か期待しているんだろう。

 それがわかってしまった私は、心配をかけたくない、期待に応えたいと思った。

 学校に行き続けた。泣きながら行った。

 いじめはどんどん酷くなった。いじめているのに学校に来る私が気に入らないのだろう。

 トイレで吐いた。先生に相談しようと思った。やめた。泣いた。繰り返した。

 そして、学校で倒れた。

 突然意識がなくなって、廊下で倒れてしまったのだ。

 次に目を覚ました時は私は保健室にいた。

 横には人がいた。

「あ、目が覚めたー! よかった。突然廊下で倒れたからびっくりしたよ!」

「す……すみませ…。ご迷惑を……かけてしまって。すみません」

 もう、みんな怖かった。みんな私を嫌っていると思っていた。

「なんでそんなに謝るんですか?

 私は別に怖い人じゃありません!」

 嫌われてると思っていたはずなのに、この人の言葉を聞いた瞬間に涙が出た。

 悲しいわけじゃなかった。ただ、安心した。

 中学生になって初めて気を抜けた。

 私は泣いた。泣き続けた。女の子はずっとそばにいてくれた。

「もう大丈夫かな?

 じゃあ、挨拶させてもらうね。私は古原由依。玲奈さんの状況は知ってる。

 本当は助けたかったの。いつも疲れて、今にも倒れそうな玲奈さんをみた時から、ずっと。

 でも、勇気が出なかった。ごめんね。もっと早く声をかけてあげれればよかったんだけど」

 そう言って古原さんは泣いた。私のことで涙を流してくれた。

 初めてだった。

 

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