第5.5話 金澤玲奈の今

 最近私は気の合う友達ができた。名前は君影紘という。

 彼は私が今まで会ってきた人とはどこか違う。優しさとか、性格的な面じゃなくてもっとそこの方にある何かが違う。

 彼とは良く本の話をして盛り上がっていたが、つい先日泣いているところを見られてしまった。

 紘くんは大丈夫と聞いてくれたが、私は見られると思っていなかったからとてもびっくりして言葉も出なかったのを覚えている。

 紘くんは私に何があったの? と聞いてきたが答えられるわけもなく、本当のこととは少し違うことを言った。

 紘くんはアドバイスをくれたけど、多分私が欲しかった言葉じゃなかった。裏切られた感じがした。

 わかっている。紘くんは悪気はなくその言葉を言っただけで、問題があるのは私だということは。

 紘くんには悪いけど、私はしばらくのあいだ距離を置くことにした。


「そうそうレイ、最近違うクラスの男子と一緒にいることが多いけど? もしかして彼氏さんかな?」

 レイとは私のことで、こんな質問をしてくるのは私が心を許している数少ない親友の蔦元なぎさ。

「ちょっと、違うよ。最近仲良くなっただけだよ」

 本当は紹介したかった。私が信頼できる人が増えたよって、嬉しいって言いたかった。

 けど言えなかった。

「レイ、友達を作るのはいいけどしっかり判断しなよ。もうあんなことになるなんて嫌だからね」

 なぎさがこんなこと言うのも、中学生の頃の私を知っているからである。

「あはは……、わかってるって。あの時みたいにはなりたくない」

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