第4話 呼び方
次の日、自分の気持ちが【恋】だと気づいた俺の心はとても軽くなっていた。
自分の気持ちに気づいたあの日、金澤さんと話すのが恥ずかしくなってしまい話を切り上げて帰ったしまった。正直まだ興奮している。
こんな状態で生活するのは厳しいと思った俺は今図書館にいる。
俺にとって図書館は一番心身ともに落ち着く場所である。疲れた時や落ち着かない時はいつもここに来る。
「たまには和訳された本でも見てみるか」
俺は基本的に日本人が書いた小説しか読まない。何故だかわからないがしっくりくるのだ。
だが、たまに和訳された本を読んでみると日本人とは違う捉え方で書かれているから気付かされることも多い。
「だから、本を読むに越したことはないんだよな」
「そうですね。本を読むといいことがたくさんありますから。
でも、図書館での独り言はやめたほうがいいですよ」
「え……? え…、金澤さん?」
確かに独り言を言っていた。それはまあいつものことだが、反応されるとは、ましてやそれが金澤さんだとは思わず変な反応をしてしまった。
「こんにちは、君影くん。本を読んで嬉しいのはわかりますが、落ち着いてください」
「すみません、金澤さんも本を探しにきたんですか?」
「はい、買った本がなくなったんですけどお金がないので借りに来ました。
そうでした、昨日君影くんに言いたいことがあったのに先に帰ってしまったのでいえなかったことがあるんです」
そうだったのか、少し悪いことをしたな。
「突然で申し訳ないのですが、連絡先を交換してもらえないでしょうか? 本のことで話せる人がいなくて、こんなに話が合う人は初めてだったので、場所を気にせずにお話ししたいと思っていたんです」
え…、そうだったのか。昨日俺が恥ずかしさなんかの負けずに話していれば連絡先を交換できていたのか。
「そうでしたか、昨日は先に帰ってしまってすみません。俺も連絡先交換できたらなって思ってました。ぜひお願いします!」
「ありがとうございます! これでいつでもお話しできますね!」
そのあと俺たちは好きな本について話し合い、紹介してそれぞれの帰路についた。
『今日は楽しかったです! また学校でお話ししましょう!』
という文とともに可愛らしいスタンプが送られてきた。
金澤さんはクールなイメージがあったので、スタンプを使うイメージはなかったのだが、可愛いスタンプが送られてきてドキッとする。
『俺も楽しかったです。金澤さんの勧めてくれる小説は面白そうなのばかりなので早く読みたいです』
『そうそう、一個言いたいことがあるのですが、連絡先も交換しましたしそれなりに仲良くなったので、名前で呼んで呼び合いませんか?
私、あんまり苗字で呼ばれるの好きじゃいんです』
そうだったのか。でも……、恥ずかしくない? 急に名前呼びか。でも苗字が嫌なら仕方ない。
『わかりました。じゃあ、玲奈さんも俺のことは名前で呼んでくださいね』
今日玲奈さんに会うとは思わなかったけど、名前呼びか…。なんかこそばゆい感じがするな。
名前呼びになった次の日、俺は目が覚めてしまったので早めに学校に行くことにした……のだが、学校に入ったら玲奈さんが–––泣いていた。
「……玲奈さん……? どうしたんですか……?」
玲奈さんのその涙は、とても–––––
––––寂しそうだった。
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