第2話 幾何学模様
「ねね!棗。係同じやつにしよ!」
「あ、もちろん!めんどくさいし去年と同じ
やつにしない?」
「うんうん、私もそのつもりだった!
掲示係、結構楽で良かったし。」
「仕事少ないからねーふふっ」
「それでは!よろしくお願いします笑」
「こちらこそ!よろしくお願いします笑」
2人揃って敬礼のポーズをする。
あぁ、ほんとに雫と同じクラスでよかった
「はーい、じゃ最初に代議員さん決める
ねー。 男女1人ずつ、生徒会入ってる人は
なれません、やりたい人!」
「…」
当然、誰も手を挙げない。
「え、誰もいないなら私やろうか?」
そう名乗り出てくれたのは松本 小枝ちゃんだ。まだ喋ったことはないけど“フレンドリーで面白い”と1年生の時から有名だ。
「おぉぉぉぉ!!」
クラスから歓声が上がる。
“これで代議員は免れた!”と女子は一安心だ
「他やりたい人いなーい?…じゃあ女子の代
議員は松本さんに決定! 松本さんよろし
くね. 男子はやりたい人いないのー?」
「…」
「釜田、おまえやれよ! ほら去年もお前
やってたじゃん!」
「いやあれはじゃん負けで仕方なくやっただ
けだから…そういう植本がやればいーじゃ
ん!」
「いや、俺は他にやりたいことあるし!…」
男子達による代議員の押し付けあいが始まる。これじゃあ、相当時間かかるだろーな…
「もうあみだくじで良くない?こんなこと言
い合ってたら時間の無駄だって」
「いいじゃん!いいじゃん!」
三原先生は“こういうのは自分から手を挙げることに意味があって…”なんてごにょごにょ言っていたけれど、これ以上時間をかける訳にはいかない…と諦めたらしい。
「では!発表します!
2年3組 前期代議員を務めるのは…」
クラスのみんなで机を小刻みにたたく。
「…五十咲 琉睛くんです!
いぇ────い!」
「え、あ、え、」
「おぉ!おめでとう!五十咲ー!笑」
私の隣で1人パニックに陥っている五十咲くん。 ご愁傷さまです。そっと手を合わせる
「五十咲くん、よろしくね!
代議員が決まったので次決めますねー…」
三原先生は五十咲くんに決まってホッとしているように見えた。まぁ、確かにとんでもない人なんかに決まっちゃったら大変だもんな…。
「なんでよりによって…」
教室の中。五十咲くんだけがブルーに染っている。
「私、案外五十咲くん代議員に向いてると思
うよ?」
「案外って…」
「頑張って♡」
「うわー。これが勝者の余裕か…」
「ふふ」
ふと我に返る。こんな余裕な感じでいるけど私だってまだ雫と一緒に掲示係できるって決まったわけじゃないんだ。
「次、掲示係やりたい人ー」
まっすぐと手をあげる。
お願い!誰もいませんよーに!
「あー、3人か…じゃんけんね。」
えー…。
手を挙げたのは私と雫、そして綾瀬くんだった。
「あのー、別に俺被ってるなら降ります!」
え、やった!綾瀬くんやっぱり優しいな。
まぁでも普通この状況だったら誰でもおりるよねー…
「あ、ありが…」
「そんなの悪いよ!綾瀬くん降りなくていい
よ!」
え?
すると雫が私の所にやってきた。
「ねぇ、棗。棗…降りてくれない?」
「え、一緒にやるって…」
「そうだけどさ、綾瀬くんと同じ係になれる
チャンスなの!お願い!」
「いやでも…」
「棗、私の恋応援してくれないの?
棗とは他でも一緒になれるけど綾瀬くんと
はなれるって限らないじゃん? チャンス
逃したくない!」
雫が綾瀬くんのこと好きなのは知ってるし応援してるはずだけど…
やっぱりここは友達として降りた方がいい。でも… 私の心は幾何学模様のように複雑になっていた。
「2人とも、綾瀬くんが降りてくれるって」
「あ!先生、楠木さんが降りてくれるそうで
す!ね!棗」
「いや、いいよ。俺特別やりたかったわけ
じゃないからさ」
「遠慮しないで綾瀬くん!棗、他にやりたい
やつできたんだって!ね、棗」
「あ、えっと、まあ」
「じゃあ、掲示係は綾瀬くんと立花さんに決定」
…びっくりした
でも友達だもん。私が降りるのはあたりまえだ。
「綾瀬くん、よろしくね!」
「こちらこそ」
ズキンと心が痛む。
きっと2人はこれからもっと仲良くなるんだろうな。そう考えるだけで胸が痛むのがわかった。
「楠木さん、なんで降りたの?」
席に戻ると五十咲くんがはなしかけてきた。
「いやー、あの、なんかなんとなく?あ、い
や違う。だから他にやりたいのができ
ちゃってさ…」
さすがに、まずかったかなー…。
さっき雫が“やりたいのができた”って言ったのを完全に忘れてた。
「…ふーん、そっか。 そこでは被らないと
いいね。」
「あ、うん。ありがと」
なんだろう。
五十咲くん気づいてると思う…だけど“違うでしょ”とか言わないでいてくれるんだ。
優しいな。
恋模様 雅 @mifu1003
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