653回目の(前編)

 もう数えるの面倒になったので数えていない。今日は彼女がお外におさんぽに行くらしいので、かわりに店のお留守番。


「ここ座ったらアンニュイになるのかな?」


 彼女がいつも座っている場所。椅子。クッションがたくさんくっついている。


「お」


 座ってみると。


「おおお」


 とても心地よい。足のほうにはツボ押しとマッサージ機。手元にはラップトップ。


「うわすごいじゃん。すごい」


 思わず笑みがこぼれるほどに。快適。


「これに座っていて、それでなおもアンニュイなままか」


 ありえない。


「どこらへん散歩してんだろう」


 散歩付き合うといったのに、店番しろという回答だった。店の外なら、彼女の笑顔が見れるかもしれないのに。

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る