第肆夜
其の夜は明るかった。
どうも此の国は、偏った方向に動いているようだ。ニュースで流れていたのは飲食店やスーパーマーケットの営業時間の引き延ばし。繁華街の通常営業並になるらしい。変わらないのはインターネットの海と、後は延ばしようがないコンビニエンスストアぐらいか。ガワしか知らない人間の為に内部の人間が壊れる良い例だ。何とも可哀想な話である。
まぁ、学生__こと私のような受験生にはあまり関係のない話でもあるのだが。今日も机に向かう退屈な時間を長々と過ごした。大概の内容を進級前に教科書を読み込んで覚えたものだから、本当に何も面白くない。私がしたいのはそんな陳腐でつまらないものじゃない。
校則で禁止されているバイトを三つ程掛け持ちして、二年と一寸の間に自分で買った、沢山の"未知"の本。其れは例えば麻酔が何故効いているか分からないとか、アロエが傷に効く事が医学的に証明されてないだとか、様々な茸が生きる理由が諸説あるとか、神や幽霊がいるいないだとか。後は勿論、一番の未知と言ってもいい、此の世界や星や月が浮かぶ宇宙とか。
内の一冊を手に取った。惑星の中でも特に地球に影響を与えている、太陽とかいうやたらに大きい奴の本だ。図解で説明されてたり年表で説明されてたりするのだが。何故断言出来るのだろうかと、思わざるを得ない。此れを作った人間は太陽を割ったことがあるのだろうか。此れを作った人間は、太陽が出来る過程を生きていたのだろうか。全て仮定の話ではないのか。そう、思わざるを得ない。
だからこそ面白いと、言われれば其れまでだ。私はこんな感じの本が一番に好きなのだから。人の愚かさと、知的好奇心が見えるこんな本が。でなければ買わない。無駄な出費は控えるタチだし。
好きな本には、吝嗇をしないと決めている。己の脳髄を豊かにしてくれる物に糸目をつけては、可能性を轢き潰すのみ。とうの昔に離れた誰かの言葉を、未だに守っている。熟々頑固だなと己で思う。
摂氏19.8度。眠り落ちるには冷え込むが、夢を見るには暑すぎる。瞼が幕を閉じるのは、果たして明後日だろうか。
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