第2話 納品クエストは効率がいい?

 澄み渡る青い空、そしていかにもゲームで出てきそうな田舎でいて長閑のどかな村、ここは元居た世界と違い文明はあまり発展せず中世ヨーロッパのような風景だ。

 そう、ここは俺が人生をかけてやってきたゲームファイナルクエストの世界!

 そして俺、成瀬葵は長時間のプレイと廃課金で最強に仕上げたキャラ、アルバート=グランフェルに紆余曲折を経て転生したんだ――

 最強のキャラに転生してな……


「いくらなんでもペナルティ重すぎじゃね?」


 なんと転生すると同時に転生ペナルティなるものを受け最弱の初期ステータスキャラになって転生してしまった。


「てかなんだよ! ギフテットって、ファイナルクエストにはなかった要素だし最後文字化けしてるのか読めないし!」

「あっ……どうもお気になさらずあはは」


 たまたま俺の横を通った人に聞かれてた…

 俺はリリーエル付近の道端で心の声が出ててしまうほどのショックと謎の存在で少々パニックになっていたのだ。


 ※※※※

 数分後


 うーん……

 きっと転生ペナルティとかもあの神様が面白がってつけたもんだろう。

 まずは、他にも何か変わったところがないかチェックだな


「ステータス」


 俺がそう言葉を発すると目の前にファイナルクエストと同じステータスが出てきた。

 どうやら音声認識でステータスなどが開けるっぽい。

 中々に便利だ。

 そういえば、持ち物を確認してなかった。

 まぁあんまり期待はしてないが……

 身に付けている物を一旦降ろして整理してみると


 ――――――――――

 所持金 1000G

 持ち物 

 ・木刀

 ・リリーエルの森の地図

 ・カバン(皮製)

 ・おにぎり

 ・皮袋(所持金管理用)

 ――――――――――


 うわー全部取られてる。

 完全に初期装備だ。

 俺の課金した装備と長時間のプレイ時間返してよ!

 と叫びたい気持ちはあるが、神様との連絡手段もないしひとまず置いておこう

 となれば最初にするのは…


「レベリングするか!」


 ひとまず装備とかはどうでもいいから効率的にいこう。

 ここの世界がどれだけゲームに似ているか分からないけど、ここでうだうだしても時間の無駄だ。

 俺はゲームの中では最強になった男だからな、チュートリアルなんていらない。

 効率よく最短で最強になってやる!


 ※※※※

 数時間後


「そこのおじさん!回復薬の材料在庫ないんじゃない?」

 

 おれは雑貨屋を訪ねていた


「なんだあ? てめぇよく気がついたな。回復薬を作るための薬草が足りてないんだ。」

「お前さん見たところ駆け出しの冒険者だな? もしよかったら薬草3房ほど採ってきてくれないか」


 雑貨屋のおじさんが俺に依頼クエストを頼んでくる事はもう知っていた。

 何故ならこの依頼クエストはゲームにもある納品クエストだからだ。

 そしてこのゲームファイナルクエストにはある仕様があった。

 それは、納品クエストは何回でも受注出来るという点だ。

 この仕様があるお陰である一定レベルまではあまり危険を犯さずにレベリングする事が出来る。


「おじさんその依頼クエスト受けるぜ」

「おおそうか!」

「そこにボードと収納ボックスがあるだろ?」


 雑貨屋のおじさんは入り口前にあるクエストボードと収納ボックスを指さしてくる。


「そこに薬草を収めてくれれば依頼書にサインするからあとはギルドに持っていけば依頼クエスト完了クリアだ」


「オーケー、分かった。じゃあ早速なんだけど薬草収めていいか?」

「ん?その様子だともう薬草採ってきてくれてたんだな?」


 俺は準備万全だ。

 ここで荒稼ぎしてさっさと次の町にいく予定だ……


「外の荷車に積んであるからちょっと待っててください」

 

 外から俺は100回分の300房の薬草を積んだ荷車を持ってきた。


「ごめんおじさん収納ボックスにもしかしたら入らんかも…」

 

 明らかにオーバーな数だがゲームではこれでもいけたんだけど…


「え……いやいや3房って言ったよね!? こんなにいらないよ!」


 雑貨屋のおじさんは目が点になり少々困惑してそうな表情だ――


「だから、おじさんその依頼100回受けるからさ受け取ってよこれやくそう

「いや、無理だ……俺の依頼は1回分でいいんだよ薬草は! こんなに持ってこられても困るよ」

「ちゃんと1回分の報酬は払うから残りの物は自分で持って帰ってくれよ」


 普通に考えたらそうだよな


「え、いや……ええええええ!?」


 雑貨屋のおじさんからもっともな言葉が返ってくると同時に俺は再認識した。

 これはゲームの世界じゃないという事に。

 俺は勘違いしていたようだ。

 こっちの世界に来てから俺は最初にゲームのステータス画面だったりシステム音声のような声を聴いてしまったからてっきりここはゲームに俺が入り込んだいわゆるMMORPGゲームへの転生物だと思っていた。

 だがここは、ゲームの世界観などが一緒なだけで、本当に異世界のようだ。

 だからクエストもゲームではただ依頼主と話してクエストの完了ボダンを押せば報酬が貰えるゲーム的なシステムじゃなかった。

 これってつまりは俺の知っている世界ファイナルクエストと今いる世界は一緒のようで変に現実世界のような要素が交わっている世界って事だ。

 

「じゅ、10回分でいいで受け取ってくれませんか!」

「いーや無理だ。ほら依頼書にサインしたからギルドに持って行って報酬受け取りな!」


 俺は依頼書&荷車と共に無理やり外に出された。

 え、これどうするの?

 納品クエストって一回分の報酬は少ないけど数をこなせるから効率がいいわけで、          1回限定だと正直ここら辺のしょぼいアイテムの納品クエストはゴミクエストなんだが…

 あと、この薬草よ!

 こんな数どうしろと?

 採ってきたのは自分だけどね!?

 こんな量、絶対使い切れないし多分現実世界と一緒だったら数日で腐っちゃうでしょこれ!

 あーもうなんかどうでも良くなってきた……

 取り合えず報酬を貰いにギルドに行くか


 俺は、大量の薬草を載せた荷車を引きながらギルドに向かうのであった……

 あーログアウトしたいなぁ……

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