Q7:良い話と悪い話[ハーフ&ハーフ]

 それはいつもの他愛ない会話の中に突然現れた。 


「……良い話と悪い話があるんだけどさ」


 大好きなキミの笑顔から出てきたのはそんなセリフ。


「う、うん」


 もちろんボクはその唐突さにかなり困惑していた。

 それでも表情には出なかったと思う。


 一呼吸置いてから、彼女は静かに続ける。


「……どっちから聞きたい?」


 良い話と悪い話。

 いったいなんだろう?

 ボクには予想がつかない。


 この場合は……どちらから聞くべきなんだ?











「関川くん?」

「正直に言うと……良い話しか聞きたくない」


 覚悟を決めて言ったボクの言葉に、彼女はカッと目を見開いた。


「そう」

「こんな男でごめん……」


「ううん。とても正直で良いと思う」

「そう?」


「うん。とっても正直だから、良い話と悪い話とおまけにヤバい話もしてあげる」

「うん?」


「良い話は宝くじが当たったの。100万円」

「え!?」


「悪い話は、借金してるの。闇金から1500万円」

「え!? え!?」


「ヤバい話は」

 彼女は笑顔で続ける。ボクが大好きな陽だまりのような笑顔で。

「昨日、返済期限だったんだ」


 その時、チャイムが聞こえた気がしたが、すでにボクの意識は遠のいていた。


「ごめんね――関川くん」


 キミに入れてもらったコーヒーは、いつもより美味しかった。

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