学習机
息子がこの春から小学生になる。
去年のランドセル商戦の時には
一切なにも言ってこなかった旦那が
急に家具屋に行こうと言い出した。
「学習机、買おう」
「なんで突然?」
「俺、小さいころなかったんだよ」
「でも結構スペース取るよ?」
「いや、学習机は必要だよ」
うーん……と、私は渋る。
最近は学習机がない方が効率がいいとか
家族の目の届くところで勉強した方がいいとか
どうせ学習机は物置になるなんて言うけれど。
「俺、小さいころ本当に欲しくてさ」
……旦那がそこまで言うなら。
「うーん。じゃあ、行ってみようか」
息子も自分の机があるなら
学習ワークも今よりヤル気になるかも。
それに自分の空間も欲しい年ごろかも。
「よし!」
家具屋に着いて、旦那は真剣な眼差しで
あれでもないこれでもないと見て回った。
息子も久しぶりに家族で出かけられて嬉しそう。
これがいいーと息子がデザイン性抜群のものを
選ぶけれど、旦那は顔をしかめ、首を振った。
「ステンレスはないのかな」
「一昔前のオフィスにある感じのやつ?」
「ああ」
「ないでしょ――」
「いや、ちょっと待て」
旦那はなにかを携帯で調べ始めた。
「なんなの一体……」
「うん……今は木製になったのか」
「何の話?」
「木製のやつでいい。引き出しが必要だ」
そう言って旦那が示したものを
息子も気に入ったらしく
数日後に我が家に届いた。
その晩――旦那が
学習机の引き出しを開けては呟いていた。
「ダメかあ」
いや、タイムマシンは入ってないでしょ。
っていうかそのために買ったんかい。
息子様の学習机で遊ばないでください。
いろいろな言葉が頭をよぎったけれど
あくびを噛み殺しながら私が言えたのはこれだけ。
「おやすみなさい」
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