体育会系

 昔のお話――


「おおい!」


 先生が声の限りに叫ぶ。

 暑苦しい指導は日を重ねるごとに

 度を超していき、生徒を辟易へきえきさせていた。


「お前たち、もっとタマシイを燃やせよ!」

「先生、自分たちは――」

「足りないんだよ! 回転が!」


 熱血する先生は名指しし始める。


「見ろよ、木暮こぐれを! すごい回ってるだろ」


 そう言われた木暮は図体をでかくしながら

 グルグルと高速回転している。


「な、驚異的な速度だ……!」


「ほら、お前たちもっと回れ! 回るんだ!」


 先生を中心として、

 生徒たちは各々の力の限り身体を回す。


水川みずかわ、いいぞ。いい調子だ」


 だがふらつく生徒も出てくる。


地田ちだ! 火村ひむら! 土屋つちや! 天本あまもと! 海野うみの

 重心がブレてるぞ! やる気あるのか!!」


「うわあっ」


「天本ぉ!」


 足を取られて天本が盛大にこける。

 そのまま横倒しで、回転し続けている。


「大丈夫か、天本ぉ!」


「うっす! 自分大丈夫です!」


 先生から遠く離れながら天本は根性で回り続ける。


「こらあ! 金井かない! 全然回れてないぞ!」


 そう言われた金井の回転はかなりゆっくりだ。


「気合入れんか!」


 先生に身体を引っ張られた金井は

 そのまま逆立ち状態になって回転した。


 それは恐ろしいほどにゆっくりだったが

 先生の心を動かすには十分だった。


「金井! お前ってやつは!!」


 生徒たちは思い思いに金井を応援する。


「お前たち――水川、金井、地田、

 火村、木暮、土屋、天本、海野!

 お前たち、最高だ! 俺の最高の徒だ!」


 戸うこともあったけれど、

 徒はいつも先生を信じてきて良かったと

 涙すら流すものもいた。


 そして彼らは太陽せんせいの周りを回り続けた。


 ・・・


「やがて、太陽の周りを回ることを公転、

 己の力で回り続けることを自転と呼ばれ――


 そのを略し、

 『太陽系』と呼ばれることに

 ……なったとか、ならなかったとか」


「なにそれ……?」


「お前が理科教えろって言ったんだろ?

 なにかを覚える時は物語形式にするといいんだ」


「いや、逆に分かりにくいしな!?」


「ちなみに――めいちゃんって徒もいたんだけど」


「その字止めろよ」


「校則が変わって、惑星じゃないからって

 2006年に転校させられたんだ」


「冥ちゃん、かわいそうだな」

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