徒然なるままに短編を書き散らす

マグカップ

うちにはマグカップが５個あった。

ピンクのネズミ柄、白いお姫様柄

白いヒツジ柄と赤いネズミ柄と

――青いネズミ柄。

この青いネズミ柄が、彼ので。

残りの４個はわたしのマグカップ。

ひとり暮らしには多いんだけど捨てられない。

うちに遊びに来るときは

お揃いのマグカップで飲むのがお約束。

わたしのマグカップもぜんぶ

最初はペアだった。

ピンクのネズミ柄には、黒いネズミ柄。

白いお姫様柄には、赤い王子様柄。

白いヒツジ柄には、黒いヒツジ柄。

そして、赤いネズミ柄には、

彼の青いネズミ柄。

今日――青いネズミ柄のマグカップが割れた。

言い合いして、カッとなって。

彼のマグカップを流しに落としてしまった。

怒りながら洗い物をするとロクなことがない。

ケンカするといつもそうだ。

彼のマグカップを壊してしまう。

泣きながら欠片を集めるわたし。

怒るとわたしは、

感情が高ぶって泣いてしまうから

イライラした彼は、部屋を出て行ってしまう。

しばらくすると、お互いに落ち着いてきて。

彼が『ごめんね』とメッセージを送って来る。

わたしも『ごめんね』なんて言って。

仲直りのデートの約束をする。

そして一緒にお揃いのマグカップを買って来て

うちで映画でも見ながらコーヒーを飲む。

それがわたしたちのお約束。仲良しの秘訣。

うちにはマグカップが６個ある。

ピンクのネズミ柄、白いお姫様柄

白いヒツジ柄、赤いネズミ柄

ピンクのクマ柄と――白いクマ柄。

この白いクマ柄が、彼ので。

残りの５個はわたしのマグカップ。