くすむ夜水
俺は雪下さんと別れて鞄から深めの帽子をかぶり顔をあまり見られないようにして雪で白く染まりつつある道を歩く。
クラス内では木村
だからこそお似合いカップルとされていた。
それがあんなことになっている。
「…ほんと、とことん面倒臭いな」
俺は呆れながら呟く。
クラスで過ごすためにそれなりの交友を持っている俺はそれなりに事情を知っている。
クラスで木村のいるグループみたいになっている和に呼ばれて自然と入ったりしているからその時木村と俺を合わせて4~5人くらいでその話しになっているのを聞いていた。
「なぁなぁ木村、雪下とはどこまでいったんだよ~」
「だからあいつとはそんなんじゃないって言ってるだろ!」
周りのグループの人以外には聞こえないように木村に聞く友人に木村は恥ずかしそうに言う。
だがその顔は満更でもなさそうだったのだが…
「(…なんか嫌な雰囲気感じるな)」
俺は木村からそんな感じがした。
「それに俺、好きな人いるし」
木村が声を少し小さくして言う。
「はっ?マジかよ!誰だ!」
「しっ!周りに聞こえるだろ」
グループの皆が驚いて声を上げるのに驚いて木村は雪下を見ながら声を抑えるように言う。
明らかに雪下には聞かせたくないようだった。
「教えろよ~誰にも言わねーからさ」
1人の言葉に木村は絶対に言うなよと言い含め話した。
「三年の佐々木先輩だ。前にちょっと機会があって仲良くなってな。ちょいちょい遊びに行ったりもしてる」
木村の言葉に周りは「お~」と感心していた。
俺はその様子ほんの少し不快感を覚えた。
「(こいつもしかして…)へぇ~、じゃあ本当に雪下さんと付き合ってたわけじゃないんだね~。良かったじゃん吉村、前に雪下さん可愛いって言ってたもんな」
「ば~か、可愛いって言っただけだろが別に狙ってたわけじゃねーよ」
俺の言葉に笑い飛ばした隣の吉村を一瞬睨み付けるような目になった木村を見て俺は余計に不快感を覚える。
「まぁ、お前みたいな軽そうな奴に華林はやらんけどな!」
木村はすぐに笑いに変えていた。
だが俺はこの時には既に気分が悪くなっていて軽く雑談をいなしトイレに言ってくると違和感ないようにグループから抜けた。
あの時のことを思い出しながら気分が悪くなるのを感じる。
あの時は俺の勘違いかもしれないと思っていたが、
「やっぱ人間ってクズだな」
俺はそう吐き捨てながら目的のビルにたどり着き裏手の従業員用のドアから入る。
従業員用のロッカールームに入ってロングコートを掛けて帽子を脱ぐ。
「…周りには見られてないな」
「っ!マスター。ビックリさせないでくださいよ」
後ろから澄んだ低音の声で急に話しかけられてビックリしてしまう。
「大丈夫ですよ。途中クラスメイトと会いましたが家まで送ってここに入ったのは誰にも見られてません」
「…大丈夫なんだな?」
「ええ、クラスメイトと会う時帽子してませんでしたし、その娘の家は少し離れてます。それに俺なんか気にしてる場合ではなかったでしょうしね。」
「なら良い、お前も早く着替えて準備しろ」
カマーベストの初老の男性はそれだけ言って出ていこうとするがピタリと止まる。
「?どうしたんですか?」
「…何でもない」
初老の男性は一瞬躊躇うようなかんじだったが結局出ていった。
俺は不思議に思いつつも頭にワックスをかけ、右半分だけバックにする。
そして初老の男性と同じ服装、カマーベストにスラックス、ネクタイを締めてロッカーをでていくのだった。
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