孤独な雪
私は寒い中公園のベンチで1人座っていた。
いつまでそうしていたのか。
ふとうつ向く私の前に誰か立っていることに気づく。
「…やっと顔上げた。やっぱり
目の前に立っていたのは見覚えのある男子が傘をさしていた。
名前は確か…
「
「そうですよ~。貴方の水澄です」
私はへにゃりと笑う同じクラスの彼を見てやはりどこか恐怖のようなよくわからない感情を抱いた。
彼は同じ高校生の中でも結構背が高くそれなりに顔は整っていて、見慣れない私服は大学生と言われても違和感がないくらい大人みたいだ。
だけどユルいへにゃりとした笑顔が年相応に見せている。
「こんな雪の中ベンチに座り込んでどうしたんですか?」
誰もが気を許しそうな気の抜ける笑顔で私に問いかけてくる。
そう言われて私は初めて周りのようすに気付いて驚く。
「…え?雪?」
私は周りが暗くなってて殆ど公園の街灯だけで周りには雪が舞っていた。
私は空を見上げながら呆然としていた。
「…もう遅いよ。近くまで送ってあげるから帰ろう?」
私は彼のさっきまでと変わった口調につられてまた彼を見る。
そこには優しい微笑みを浮かべて私に手をさしのべる彼がいた。
なんで?
そんなに話したこともないのに。
なんなら廊下ですれ違ったりしたときに挨拶したりすることもなく気にせず通りすぎるような関係なのに…?
わからない
いつも彼は笑って相手に合わせて的確に相づちをうって相手を不快にせず、自分からは関わりには行かないけどグループの誰かが話しかけると自然にその和に溶け込む。
本当に水のような人だった。
そんな透明で、でも自然な彼の笑顔は透き通っているはずなのに私はまるでそこの見えない…落ちてしまえばどこまでも底無く沈んでいく湖でも見ているような…そんな気がした。
「…気にしないでください」
私は怖くなってうつ向いてしまった。
だけどうつ向くとまたあの光景が甦る。
私とは違う人と楽しそうに腕を組んで歩く幼馴染み。
何度胸を抉られるのだろう…何度自問自答しただろう。
私は気持ちを伝えていた。
もしこの気持ちを隠して言えずにいたならこの結末にも納得はいく。
踏み出さなかった自分が悪いって自分を責められる。
なのに…なんで?
私は彼と出会うために生まれてきたんだと毎年幸せを噛み締めながらこの日を迎えていた…よりにもよってなんでこの日に貴方はいないの?
私は荒む思いを…ぶつけるその先を探していた。
彼を責めれば良いのかもしれない。
でも私には出来なかった。
いっそのこと彼を嫌いになれればどれだけよかっただろう。
彼を責めて、糾弾して…最低って叫んでキッパリ関係を絶てたなら…
でも出来ない。
好きな彼を責めるなんて…出来ない。
それにきっと何をしても無駄ってわかってるから。
責めても…口汚く罵っても…その先は?
結局は空しいだけだもんね…
そんな弱い自分に暗くなっていると隣に誰か座る気配がする。
そして私に降りつもる雪の感触が止まる。
私が視線を横へ向けると彼はただ前を向いて傘を私も入るように差して座っていた。
「…なんで?」
私の声に反応した彼は私に目を向ける。
だけどすぐ前に目を向ける。
「…寂しそうだったから」
そう言って彼は黙ってしまう。
そんな彼の顔には何の感情も浮かんでなかった。
ただそこにいるだけ。
何も聞かず、何も言わず、何も思わず。
でも隣にいる。
ただ隣にいる。
今の私は1人じゃない。
泣き疲れてなにも話したくなかった。
何も聞きたくなかった。
何も考えたくなかった。
でも…
1人は寂しかった。
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