澄んだ水に写る私は
暁真夜
プロローグ
私はその目の前の光景に引き裂かれるような痛みを感じた。
そんなのは存在しない痛み…でも私の心は確かにそんな痛みを感じていた。
元々あった予定がなくなって…とても悲しくて…何かに焦りを感じていて…気晴らしに外へ出たのが運のつき…いや、不幸なのか幸いなのかわからない。
私の目に移る彼は私ですら見なくなっていたとても楽しそうな笑顔を浮かべて女の子と腕を組み二人で歩いていた。
私と会うときよりも身なりに気を使っているのが私にはわかった。
幼馴染みの私にはわかったんだ。
そっか…そうだよね…あんな可愛い娘と遊ぶ方が楽しいよね。
毎年ある幼馴染みとの約束よりも…その娘と遊ぶ方が楽しいよね…
別にちゃんと付き合っていたわけではない。
でも気持ちは幼いころから伝えていた。
恋がわからないから答えは待ってほしいって言われていた。
もう何年前の話だろう…
少し前から彼が違う誰かを見ていたのは薄々感じていた。
私は焦っていた。
けれど恋がわかったなら彼から何かいってくれると思っていた。
でも…
そっか…君の恋を見つけたんだね。
なんで…なんで言ってくれなかったの…?
私は止まらない涙を見られないように顔を伏せながら早歩きでその場を去る。
2月10日…毎年外はとても寒くて…でも毎年心の中は暖かかった日…
「…始めてだな…誕生日がこんなに辛いなんて…」
毎年私のそばで祝ってくれていた彼はもういない
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