第十七話 奴隷と不思議
「よっ!と」
ワリィン達に怪我させては行けないと、リーシャは馬車からジャンプして門の中に出た。
ニヤッと笑って騎士達に手招きする。
男爵の騎士ごときに負けるリーシャでは無いのだ!
「こんのぉ!!小娘がァ!」
剣を振り回して襲ってくる1人の騎士。
騎士のリーシャの頭目掛けて振り下ろされた剣が地面に突き刺さる。
「え?」
ガァン
その一瞬に後ろに回っていたリーシャが騎士が彼女に気づく前に騎士の背中を勢いよく蹴った。
そのまま倒れる騎士。
「〈カルニム〉」
リーシャが言うと杖を向けた先にあったホウキがビュンッと飛んできた。
バキッ
飛んできた箒の床を掃く所を足で折った。
そこへ残っていた3人のうち2人の騎士が右と左から一緒に攻めてきた。挟み撃ちにするつもりだろう。
リーシャは右に向かって走った。
そして相手の剣が当たるか当たらないか位の位置でジャンプした。
空中で宙返りしながら敵の後ろから頭を思いっきり柄だけになった箒で殴る。
騎士は倒れ、リーシャは着地すると後ろを見ずに後ろに箒の柄を槍のように投げた。
後ろでバタンと倒れる音がする。
リーシャは後ろの方にいる最後に一人残った騎士を見た。
その騎士は全身甲冑姿で顔も見えない。
リーシャはそっちの方に走っていって途中で姿を消した。
0.5秒後甲冑騎士のすぐ前に現れて箒の柄で殴りかかるリーシャ。
カキィィン
速すぎてすぎてワリィンの目には殴りかかった箒の柄すら見えなかったが、甲冑騎士はそれを剣で受け止めた。
「へぇ?」
またもやリーシャが消えて騎士の後ろに現れる。
甲冑の上からだと箒の柄じゃ攻撃が通らないので何とかして外さなければならない。
甲冑の頭の部分がはめてある首の部分に柄を入れてぐんっと持ち上げた。
カランカラン…
甲冑の頭の部分が床に転がる。
「なっ…」
現れた男の顔の半分は真っ赤な火傷になっていた。
この火傷の仕方…どこかで…
「まさか…!」
とりあえず無力化しなければと男の首の一点を狙って超速で箒の柄を投げた。
「?!」
彼の右手は剣でそれを防ごうとしたが左手で、その右手を抑えていた。
そのまま箒の柄か首にあたり彼はガシャンと倒れた。
「立て!なぜ立たない!小娘ごときに負けるわけなかろう!」
馬車の中で男爵がわぁわぁと喚く。
「いい加減諦めなよ?今からあなたはサンデル殿下の所に行くんだから。」
「なんだと?!」
「そのままだよ。ワリィンさんと違って頭が弱いの?ワリィンさんは叩いたらホコリが出てくるって言ってたけどちょーっと叩いたら特大ホコリが出てきたねぇ?」
「何の話だ!」
「分からないの?いやぁまさか魔法奴隷を持ってるなんてね?」
魔法奴隷とは、服従魔法(テイルピナ)という動物やモンスターに魔法をかけて言う事を聞かせる魔法が人間にかけた者を言う。
元々人間にはかけられない魔法だったが数十回に1回、稀にかけられてしまうことがある。
だいぶ新しい魔法で
成功率が低い事
成功しても右半身に火傷の様な痣ができてしまう事
そして債務奴隷や罪人奴隷とは違い普通の人を強制的に奴隷にできてしまう事からほとんどの国の法律で禁止されているため、ほとんど居ない。
しかし、強制的に奴隷にさせられることから裏では取り引きされている。
甲冑を被っていた人は服従魔法が解けかかっていてリーシャを攻撃する自分を止めようとしていたようだ。
完全に服従させられていたらもしかしたらリーシャも倒されていた位強そうだが、ただでさえ貴重でリスクも高い魔法奴隷のこんなに強い人を男爵ごときが手に入れる事が出来るだろうか?
「誰から手に入れたのかな…?」
もしかしたらもっともっと大物も関わってくるかもしれない。
「…貴様!何者だ!」
「何者って言われてもなぁ…普通の人だよ?」
「そんなわけないだろう?!」
「まぁさ。とりあえず眠っててよ。」
「何を?!」
リーシャはおなじみの手段で男爵を気絶させた。
「〈スロフォーニアス・レンガント〉」
リーシャが唱えると空中に水の檻が出来た。
そこに気絶している男爵と騎士達を入れる。
「〈スロフォーニアス・バリア〉」
檻の空いていた部分が水の膜で閉まる。
「よし!ワリィンさん!行きましょう!」
「どこへですか?」
「もちろんサンデル殿下の所です!」
するとワリィンがニコッと笑った。
「はい!」
◇◇
リーシャとワリィンが門の出口へ向かい、その後ろを水の檻がついて行く。
その異様な光景を見ていた門番の一人であるリゼンはワリィンの髪が茶色に見えた気がした。
しかし、目を擦ってまた見てみるとその髪は金色に戻っている。
彼は気のせいだと思い、床に置いてあった折れた箒の柄を拾い上げてため息をついた。
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