第十五話 リーシャVSシェリアン
1ヶ月後…
「行ってっきまーす!」
私は発動寸前の転移魔法陣の中でルーンとお母さんに手を振った。
ここまで長かったなぁ…
◇その2日前◇
「お母さん!お母さん!私冒険者になりた…」
「ダメです」
「Why?!」
「辞めた方がいいわよ?ランクが高くなって依頼受けなかったら小言言われるし」
「ま、そこまでランク高くなれないでしょ!」
「どうだか…とにかくダメ!それに危ないし…」
「一国の騎士団長捕まえるのと比べてそんなに危ない?」
「ぐっ…」
「ね?ねっ!いいでしょ?」
「じゃあ!私が出す3つテストに全部受かったらいいわよ!」
「よっしゃ!あ、そのテストってのはお母さんは余裕で出来る物にしてよ?大きな山を5分で破壊してこいとか無理だからね?小さいのならともかく…」
「小さいのならできるのかよ」
やり取りを聞いていたルーンが横槍を入れた。
「はいはい。分かりましたよー。明日やるから覚悟しときなさいよ!」
◇次の日◇
リーシャVSシェリアン
※分かりやすいようにセリフの前に名前を入れています。
ルーン「さあ!始まりました!リーシャの冒険者人生をかけたこの対決!3つ全て合格する事で冒険者になれます!ワタクシ、司会を務めさせていただきますルーンです!」
リーシャ「わーい!ドンドンパフパフ!」
シェリアン「何よこれ?テンションおかしくない?」
リーシャ「いいじゃん!楽しいし」
シェリアン「はぁー。まあいいわ。あそこの山の近くに移動するわよ。」
◇◇
テスト1 結界を破壊しろ!
山の近くには薄い青の半透明の膜が10枚あった。
シェリアン「これからリーシャにはこの10枚のバリアを破壊していただきます。制限時間は5分!ちなみに私なら余裕でできるわよ!」
ルーン「おっと!シェリーさん特製のバリアですか!これは難易度高そうだ!リーシャさん意気込みをどうぞ」
リーシャ「余裕だね!」
ルーン「おーっと?何故か余裕そうだ!」
シェリアン「ふん!強がっちゃって!」
ルーン「ここでこっそりシェリーさんの心を覗いて見ましょう!」
(バリア魔法ってのはだいたい弱点があるんだけど、この10枚の結界は全部弱点が違うのよ。
よーく見れば地味ーに違う、色の違いで弱点が分かるんだけど最近魔法を始めたリーシャには分からないわ!
まぁどうせ分からないだろうから強度は下げておいてあげたわ。)
ルーン「では行きますよー?よーい…スタート!」
途端にリーシャが最初のバリアを剣で思いっきり破壊した。
パリンっという音がなってバリアが崩れる。
その衝撃でバリアの下の地面がえぐれた。
ルーン「お?!最初の1枚が壊されました!」
シェリアン「まぁ最初はね!」
次にその左のバリアに今度は水魔法を思いっきりぶつけた。
バリアは崩れたが、1つ前のえぐれた地面に水がたっぷり溜まった。
ルーン「あれ?ぶつける魔法がちゃんと弱点をついているようですね。」
シェリアン「た、たまたまよ!」
その左のバリアには風をぶつけ、その隣には弓を射った。
バリアは崩れ、風でそこら辺の大きな草や花が全て刈り取られ、緑が消えた。矢は力に耐えきれず細切れになった。
ルーン「迷いがひとつも無いですね!まるで何が弱点か分かっているみたいです!」
シェリアン「…Why?」
その後も的確な攻撃に全てのバリアが崩れて強すぎる魔法のせいで辺りが砂漠化した。
ルーン「おーー!リーシャさん!テスト1クリアです!おめでとうございます!」
リーシャ「いえーい!」
シェリアン「Why?」
リーシャ「魔法は使わせて貰えなかったからさ。その代わりに理論とか見分け方とかそういうのは全部読んだんだよ?バリアの色くらい分かるに決まってんじゃん!」
ルーン「おーっと?リーシャさんが1枚上手でした!…バリアの色で弱点が分かるなんて宮廷魔導師でも出来るかどうか怪しいですね。HAHAHA…」
リーシャWIN!
◇◇
テスト2 サファイアを見つけろ!
シェリアン「今度はサファイアを半径1キロ内に隠したわ!これを探知系統魔法1回だけ使って10分で見つけてもらいます!」
ルーン「おー!…問題の意図を解説お願いします。」
シェリアン「探知魔法ってのはね。杖を向けた方向に波紋みたいに広がってくのよ。
だから、北の方向に向けたら南は探知出来ないわけ。
ちなみに地下や水の中とかの物体が詰まってるところは探知魔法が広がりやすくなるわ。音と少し似てるわね。
…とにかく。探知魔法1回だけなら杖を向けた方向が合ってないとサファイアは見つけられないのよ!」
ルーン「あれ?それじゃあシェリーさんも出来ないんじゃないんですか?」
シェリアン「探知系統って言ったでしょ?探知魔法の上位魔法に全方位探知魔法ってのがあるのよ。私はできるけど結構難しいからリーシャはまだ出来ないのよね〜」
ルーン「わざわざリーシャさんが出来ない魔法を選んだんですか〜!性格悪いですね。」
シェリアン「うっさい!」
リーシャ「さっさとやっちゃおーよー」
ルーン「なんか軽いですね。まぁいいや。よーい…スタート!」
シェリアン「ふふん!分かりっこないわ!」
リーシャ「うーん…お母さんの性格からして…地下かな!〈ルヌーン〉」
リーシャが地面に杖を向けて魔法を唱える。
リーシャ「あったァ!」
シェリアン「Why?!」
ルーン「おっとぉ?性格で当ててしまいました!なんかちょっとスッキリしますね!」
シェリアン「どこがよ!」
そんなことを言ってる間にリーシャが魔法でサファイアを取り出した。
ルーン「おー!リーシャさんまたまた勝利です!」
リーシャWIN!
◇◇
テスト3 モンスターを倒せ!
シェリアン「今度は大丈夫よ!今から私がこの私特製の『モ〇スターボール』から出すモンスターを倒せれば勝ちよ!いでよ!エンダートレント!」
シェリアンが小さなボールを地面に向けて投げる。
カシャンという音がしてエンダートレントが出てきた。
ルーン「わー…エンダートレント…A級モンスターですね…」
シェリアン「トレント種はね!火の攻撃がとってもよく効くのよ!でも他の攻撃には耐性を持ってるわ!リーシャは何故か火魔法だけが全然使えないからね!そこをついたのよ!」
ルーン「相変わらず性格悪いですね〜」
リーシャ「ふっふっふ!そう来ると思ったぞ」
ルーン「なんか今回の戦い誰が勝つのかもう分かった気がします。では!よーい…スタート!」
リーシャ「ふっふっふ!いでよ!ヒネズミ!」
リーシャが持っていた四角い箱を開けると小さくなったヒネズミが出てきた。
ヒネズミは火の初級魔法が使える大きなネズミで、D級モンスターだ。
リーシャが解除魔法をかけると元の大きさに戻った。
ルーン「おー!リーシャさんがヒネズミを出しました!」
リーシャ「お母さんは性格上私の出来ない火魔法で倒せるモンスターを持ってくると踏んで用意しておいたのだ!」
シェリアン「ヒネズミみたいな遅い火魔法じゃこの子は倒せないわよ!」
リーシャ「んな事分かってるよ!」
リーシャがバックから鉄バットを取りだした。
何か油のようなものが塗ってあるようだ。
リーシャ「知ってる?火魔法って一見火を飛ばしてるように見えるけど、火の球の内側には種みたいなのがあるんだって!!」
そう言いながら丁度ヒネズミが打ってきた火魔法に合わせてリーシャがバットを振る。
カッキーーン!!!!
気持ちのいい音がしてバットに塗ってあった超燃える油で強化された火がリーシャの超高速バットの加速を受けて、エンダートレントの胸に直撃した。
ギイイイイイイイイイ……
トレントが悲鳴をあげる。
カッキーーン!!!
もう1発、リーシャが火の玉を打つ。
ギイイイイイイイイイウェェェン
胸に大きな穴のトレントがもがくように逃げようとする。
カッッッキィィィィーーーン
ギィィ……
追い討ちをかけるように今までで一番大きな火が打たれてエンダートレントはバッタリと倒れた。
シェリアン「Why?!?!?!」
ルーン「リーシャさんの勝利です!おめでとうございます!これでやっと冒険者になれますね!」
リーシャ「いえーーい!」
シェリアン「Why…」
膝をついてショックを受けるシェリアン。
…そんなこんなでリーシャは冒険者になる事を認められたのであった。
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