第十話 人生のプロローグ


シェリアンが6つのダンジョンを圧倒的な強さで制覇してから1ヶ月が経った。


ガタゴトと揺れる馬車に乗りながらつい数日前の事を思い出す。


お披露目会。


貴族の5歳の子供たちが集まってやる初めてのパーティー。


我ながらよくやったと思う。


大公家の令嬢らしいように振舞ったし

媚びを売ってくる人達やこの機ににと子供であるリーシャを通し商売を仕掛けようとする連中も華麗に受け流して見せた。


「おーい!中間地点の村に着いたぞー!」


御者の人がこっちに声をかける。

相手が大公家の人間だとはもちろん知らない。


「ありがとう。さぁリーシャ。ルーン。降りるわよ」

「はーい」

「俺に命令するな!」


ちなみに↑はリルガン。別名ルーンだ。


「あれれー?年上で君より偉い私に逆らうのかなー?」

「俺はこうぞ…」


シェリアンが魔法を使って黙らせる。


「あんたは平民。わかった?」

「…はい」


リーシャは外に出て空を見上げる。

うん。

今日も星が綺麗だ。


「んーー!」


あと数日で馬車が村に着くだろう。


「さぁ!食料調達よ!」

「イエッサー!」


わざわざ村で買うより

採れたて新鮮の鶏肉とかが美味しいのだ!


「金はたくさんあるんだ!村で買えばいいだろう!」


こっちの人は意見が違うみたい。


「あんたは私の子供って設定なの!もうちょっと私に敬意をはらいなさい!」

「うるさいな!反抗期の子供なんだ!」

「ぐぬぬぅ…」


おっ

あれは!あの鳥は!

私がつけた名前でオイシイトリ!

とにかくジューシーで美味しい鳥なのです!


少し遠いな。


よし!


杖を出して道端に置いてある石に魔法をかける。


「〈フィラフドフォナス〉」


これはかけた対象を魔法で少し動かせたりするやつなのだ。


例えば矢にかければ飛んでる途中に軌道を変えることができたりある程度長く飛ばすことが出来るらしい。


「〈キリア〉」


これは対象を固くするやつ。

一旦固くしたら体力を消耗しなくていいが木とかはダメで石系じゃないといけない。


ポケットから強化版パチンコを取り出して

さっきの魔法をかけた石をゴムにかけて狙って狙って



パァァァァァン



パチンコとは思えない音がして

すぐにリーシャは杖を持ち石を長く飛ばす。



ギェェェェ



「よっしゃ!〈カルニム・オイシイトリ〉!」


これは杖が指す先にある物や、〈カルニム・〜〉の〜の部分に来るものを自分の方に引き寄せる魔法。


すぐに弾丸のような勢いでオイシイトリがこっちに来る。


「よっと!よし!綺麗に仕留められた!ほら!おかあさんもルーンも早く早く!」


まだ口論をしている2人に声をかける。


「げっ!あなたいつの間にそんなに魔法が上手くなったの」

「えへへぇー」

「あらオイシイトリじゃない!今日はご馳走ね!もっともっと狩りまくりましょ!」

「あんな遠くの鳥仕留められるか!俺は無理だ!」

「じゃあルーン。私が教えてあげよっか?」


ニヤニヤしながら言うリーシャ。


「ふん!俺は出来なくてもいいんだ!何せこうぞ…」


またシェリアンに魔法をかけられる。


「だからこそ出来なきゃ行けないの!とりあえずあんたは明日から特訓よ!」

「はぁぁ?!」



◇◇◇



1ヶ月間、お世話になった大公家の皆様方はみんな面白くて楽しい人達で優しかった。


はっきりいって大公家の異端であるリーシャを快く迎え入れてくれた。


よく分かったのが大公は孫に弱いという事だ。

同じ世代であるマールは学園の寮にいるので会えなかったがまたいつか会えるだろう。



◇◇◇



小さな女の子は

どこかで生まれ

小さな小さな村の1人の女の人の手に渡り

小さな小さな村の村娘として育てられ


近衛騎士に見つけられて

大公家の令嬢になり


またただの村娘として母親と帝国の皇子と共に小さな小さな村で暮していく。



しかしこれは彼女を取り巻く物語の始まりに過ぎないのだ。



まさしく



彼女の人生のプロローグと言えるだろう。




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