第九話 魔法


「ふん♪ふふん♪ふん♪」


買って貰った新しい杖を振り回しながらリーシャは鼻歌を歌っていた。


元々『杖』という物は、片手で持てるくらいの小さなもの(30センチから50センチほど)で、主に木や鉱石などで出来ている。

シンプルなものから装飾が施されているものまで色々あり、魔法を使うために必要なものだ。

杖の芯には、ある特別な植物が使われているらしい。


リーシャの杖も40センチくらいの杖でツルツルしていて、そこには見惚れるくらい綺麗な花が浮き出ていた。


「そんなに嬉しいの?」


「うん!だってお母さんに魔法教えて貰えるだもん」


「シェリー。もっと早く教えてあげれば良かったのに。」


隣で一緒に歩いているのはドルフェイ。

丁度城の廊下でぱったりあったので巨大な城の中を散歩している所だ。


「ダメ。魔法ってのは危ないんだから体がある程度動かせるようになってきて何が危ないか分かるようにならないと魔法は使わせちゃダメなのよ。世の中の貴族は小さい時から触れさせようとするけどね。」


「へー。帝国一の魔法使い様に言われると説得力があるな」


「ふん♪ふふん♪ふふふふふふ」


「リーシャ。だんだん鼻歌じゃなくて笑い声になってるわよ…あ、じゃあ私たちはここで練習しましょうか」


騎士たちが訓練をしている訓練場まで来るとシェリアンが足を止めた。


「ドルフェイさんまたです!」


「リーシャ。頑張れよ」



◇◇◇



「さーてさっそく魔法を使ってみましょうか」


「いえーい!ドンドンパフパフ」


「まずその1。魔法とはなんですか?はい。リーシャさん。」


リーシャが勢いよく手を挙げてシェリアンがそれを指す。


「魔法とは空気中にある魔力を自分の体力や大地の力を借りて変化させる事で水や光や火を生み出したりものを浮かす事や爆発、命を奪ってしまう事までも出来るものです。」


「はい。満点。とゆうか教科書の丸写しね。よく覚えてられるわ」


「それでそれで?!どうやって使うんですか?おかあさん魔法の理論はよかったけど魔法の使い方の本だけは読ませてくれなかったから!」


「そうね。杖振って次に起こることを想像して呪文を言います。魔法によって呪文や杖の振り方は全然違うの。でも一番大事なのは想像する事。

自分がどういう魔法を使うかちゃんと思い描くの。周りの人がどういう反応をするかとか

あと魔法の理論ね。

この魔法がどういう物かをしっかり思い浮かべるのよ。細かい所まで鮮明に想像出来たらより精度の高いものが使える。

杖の振り方と呪文は〝魔法〟という箱の鍵、想像がその魔法の箱自身みたいなもんよ。

無言魔法っていうのは鍵も想像してしまう物ね。OK?」


「勉強になります!!」


「でもこの事は教科書には載ってないわ。」


「なんで?!」


「私も最近見つけたのよ。魔法が成功する時と成功しない時の法則?みたいなのをね。

えっらい魔法学者様とかは杖の振り方、発音で魔法の精度が決まると思ってるわ」


「その人達に言ってあげないの?」


「あー学会で発表する事は出来るけどそしたらあそこのトップのオヤジたちが陰謀を巡らしてその発表を自分のモノにしようとするでしょ?そーゆーのが嫌なのよねぇ…

何よりめんどくさいし?」


「それが本音ですか」


「ともかく!帝国中でこの事を知ってるのはあなたと私だけ!

ほらなんかロマンがあるでしょ?」


「ロマン…」


「はいはい!この話はおわり!まずは水を出す所から始めましょ!」


「おっス!」


「呪文は〝スロフォーニアス〟杖の振り方はこう。

杖の先に小さな水の塊を出す魔法だからそれをよーく想像してね。」


「はい!先生!えーっと」


目をつぶり想像する。

水、水、水。

透明な綺麗な水が

直径15センチ位の水が

杖の先に出来て…


いきなり出来たらお母さんびっくりするだろうなぁ


目を開けて杖を振りながら呪文を言った。


「〈スロフォーニアス〉!!」


わっと体力が持っていかれる。


杖の先に水の渦ができてだんだん大きくなり収まった頃には杖の先に水の塊が出来ていた。


少しづつ体力が持っていかれるが集中して

水の塊を落とさないようにする。


「リーシャ!すごいわ!じゃあそのまま今度はその水が真っ直ぐ飛んでいく感じをイメージしてから、杖を前に突き出すようにしてリフェクトと言ってみて!」


「〈リフェクト〉!」


一瞬杖の先が小さく爆発した気がした。

水の塊が矢のように向こうにある木にぶつかって小さな穴を開けた。


「いえーい!私天才!」


「今のを繋げて一気にスロフォーニアス・リフェクトという呪文で言うと普通の攻撃魔法になるわ。」

「〈スロフォーニアス・リフェクト〉!」


今度は直径30センチ位の水の塊が木にぶつかって貫通した。



「「あっ」」


そのままバタンと木が倒れる。


「…」

「ご、ごめんなしゃい」



◇◇◇



「シェリーさぁぁん!!!」


リーシャとシェリアンは冒険者ギルドに来ていた。


2人が入った瞬間こっちに突進してきたのは副ギルド長。


目に涙を浮かべながら満面の笑みで奥からこっちへ突っ込んできた。


そのまま途中にあったどこかの冒険者の武器につまづいて顔から倒れた。


「ギニア?!…大丈夫?」


彼女はギニアというらしい。


がギニアは倒れたのに満面の笑みを崩さずにシェリアンに抱き着いてきた。


「シェリーさぁーん!良かったですぅあなたにやってもらいたいダンジョン攻略が6件あるんですけど今やってもらえませんかぁぁ」


「なんでそんなにあるのよ?!」


「ここ数年強いダンジョンがいっぱい出来てるんですよぉ…もちろんその6件もSSS級ではなくてSS級なんですけどぉみんな奥まで行けないからほっときっぱなしなんですぅ…なのにモンスターは溢れるから定期的に倒さないといけないしぃ…」


ダンジョンっていうのは

定期的に作られる洞窟みたいのだったはず。

奥にいる強いモンスターを倒せば消える。


ちなみにSSS級ダンジョンは大災害レベルだ。


「SS級やSSS級が行かないといけないダンジョンなんて1年に1回出るか出ないかなはずなのに?」


「そうなんですけどぉ…そうなはずなんですけどぉ…

最近SS級も帝国にそんないないしシェリーさん以外の帝国に居ると思われるSSS級の2人はどこにいるか分からないじゃないですかぁ…てかもしかしたらもう帝国に居ないんじゃないんでしょうか…?」


「いるわよ。私あの二人の座標が分かる魔道具をあの二人にくっつけておいたのよ?今は…そうね1人は丁度城の遥か上をさまよってるわ。もう1人は西の国境近くの地下深くにいるわ。」


「相変わらずどんなとこにいるんですかぁ…」


「あの二人、国境と城、地下深くと遥か上空、剣&体術と弓&投げ槍なんて何やっても真反対よねー」


「どうでもいいから2人とも依頼を受けてくれればいいんですよぉ!!あの二人、依頼受けたの数回しかないんですよぉ?!」


「2人とも変人よねー私だけは違うけど」


「え?高位貴族のくせにぃ冒険者になってしかもSSS級で帝国一の魔術師なのに帝都からの追っ手を上手くすり抜けてぇ何故か国境近くの小さな村でなんでしたっけぇ?子育て?してるってぇ?どこが変人じゃないんですかぁ?」


「…」


「そちらがお子さんですかぁ?礼儀正しいくてとてもいい子そうじゃないですかぁ。初めてギルドに来た時にSS級に喧嘩ふっかけてぶっ倒したあなたとは比べもにならないほどにぃ。」


お母さんがヤバいのは昔から変わらないんですねわかります。


「過去は過去!今は今よ!」


「今だって冒険者になって魔物を倒すぞー!って張り切ってた割に全然依頼うけてないじゃないですかぁ。」


「…わかった!わかったから!6件全部やってくるから!」


「また私の勝ちですねぇ!あなたとの口論は全勝ですう!こちらへどうぞ。もう既に転移魔法陣を用意してありますぅ。確かシェリーさんは転移使えましたよねえ?」


「はいはい。さっといってパッと帰ってくるわ。そのかわりリーシャも連れてくわよ。

勉強になるだろうし」


「SS級ダンジョンが勉強だなんて聞いた事ないですよぉ」


こうしてシェリアンはリーシャを連れて冒険に行くことになったのだ。

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