第四話 ちょっとしたトラブル


リーシャは眠かった。


「はぁーねむ。」


丁度襲いかかってきたサソリの形をしたモンスターの首をナイフではねながら欠伸をする。


「ひぃ!!」

「大丈夫ですか?殿下。でもこんなちっちゃなモンスターにビビってたら帝都まで持ちませんよ?」


自分の背と同じくらいの大きさのサソリの目をつきながら呆れた声を出すリーシャ。


このサソリはサマンサランと言い

たいして害がなく

普通のサソリにしては大きい癖にハサミが小さくて切れ味も悪いため、どうせ挟まれても痛くも痒くも無いだろうという。


まだモンスターを狩ったことが無いG級冒険者がたいてい初めに受ける依頼がこのサマンサランの討伐依頼だ。


「こんなにモンスターが居るなんて聞いてなかったんだ。」


「ここ田舎ですからね。でもどうやって村まで来たんですか?」


「近衛騎士達がこの馬車の半径1キロ先のモンスターまで切ってくれたんだ!」


「それは...下手したら生態系が壊れかねませんね。モンスターはいい素材も落とすし、冒険者ギルドも大量に殺す事は禁じてるはずですけど殿下が命令したんですか?」


「もちろんだ。俺が不便に思うなら斬るべきだろう。」


「まぁ...今は我慢してて下さい。この近くの村で強い突然変異のモンスターが出たんです。」


突然変異のモンスター。

モンスターとは普通、人に害を及ぼす生き物を指す。

モンスターはほとんどの場合、人間や鳥、猫や牛なんかと同じように産まれ、育つ。


時々突然変異や人間に魔法をかけられ普通より何倍も強くなるモンスターが産まれ災害が起こる事がある。


そういうのをまとめて突然変異のモンスターと言っている。


突然変異や故意的な進化によって害がなくなったり頭が良くなり人間と結婚する者も出てきて、今は人間と結婚したモンスターとその子供は“亜人”として普通に暮らして居る者もいる。


…とにかく非常に強い龍型のモンスターがそこそこ大きい村に出たという事で

近衛騎士とシェリアンが応援に行っていた。


もちろんドルフェイさんは殿下を護るために残ったしリーシャもちゃんと殿下を護っていたが

ドルフェイさんがそこそこ強いモンスターの巣を見つけ、殿下を護るためと巣に入っていき3分が経った。


「はぁ...私も龍型のモンスター。見たかったなぁ...」


今頃母達はその村に着いた頃かなぁと想像する。


「冗談じゃない!命の危機に会あうかもしれないんだ!さっさと帰りたい...」


皇家の完全完璧馬車の中で何言ってるんだ。

座り心地が最高らしい。

自分も乗りたいなぁーと綺麗に飾られている馬車を見た。


「巣の中のモンスター全てを狩り、戻りました!」


「はっや...」


「リーシャ。この位は君でも出来ると思うよ。」


「遅いぞドルフェイ!」


「殿下...巣を3分で制圧なんて凄い離れ技ですよ。私はお母さんにダメと言われてやった事ないけど本で1時間はかかると読んだことがあります。」


「そんな事は関係ないだろう。さぁ早く帝都へ戻るぞ!」


「殿下。少しお待ち下さい。多分シェリーが瞬殺で突然変異モンスターを倒して帰ってきますから...」


「ふん。...俺は眠い。寝る。」


その声が聞こえてから少したってリーシャが小声で言った。


「ドルフェイさん。なぜ殿下は領主代理なんて受けたんですか?」


「皇帝陛下が怠け者の殿下をなんとか公正させようと強制的にやったんだよ。まぁ殿下が失敗しても、その後他の皇族がすぐに回復すれば逆にその皇族のイメージアップにもなるからね。リルガン殿下はこれ以上無いくらいに印象最悪だし、もう下がりようがないからね。まぁ、案の定こうやってすぐに呼び戻されたけど。」


「そ、そうなんですか...」


皇帝陛下かぁーー

謁見怖いなぁ


「謁見の事心配してる?」


「え、顔に出てましたか?」


「不安そうな顔をしてたからね。陛下の事は安心して方がいいよ。私とシェリーと幼なじみですし子供に弱いので大丈夫ですよ。」


「おかあさんって皇帝陛下の幼なじみだったんですか?!」


確かに出発の時そんな事言ってたような気が…


「歳も近かったからね。よく3人で城の庭で遊んでたよ。6年程前なんか当時5歳だったサンデル殿下と一緒に城の応接間を3室果樹園の無限迷路にしたりしてたしね。」


「それって大丈夫なんですか...?」


「無限迷路と言っても仕掛けや謎をといて行けば宝石が貰えたり宝石20個を全て集めて仕掛けにはめるとシェリーの私物の金銀財宝や貴重な魔道具なんかが貰えるんだ。だから皇帝陛下もそれならと城の騎士たちに攻略させて金銀財宝を搾り取った後、城の魔導師たち総出で果樹園を壊したんだ。普通に壊したんじゃどんどん生えてくるし、何重にもロックがかけられていたからね。」


「なんか無駄に高度なことしてません?皇帝陛下もお母さんを罰したりしなかったんですか?」


「搾り取れるだけ搾り取ったと疲れた目で私に言っただけですよ。まぁそういう人だって事です。」


「皇帝陛下って少し面白い方なんですね...」


「ハハハ...」



◇◇◇



2時間が経ち

リーシャは馬に乗って周りの美味しい果実を取って食べていた。


するとそこへ...


「おーい!ドルフェーイ!トカゲ倒してきたよー!」


「トカゲって…てか、行って帰るだけでも3時間はかかる所だと思ったけど」


「あー...馬が遅くてさ?騎士たち置いていってビュンって行ってバンって倒してビュンって帰る途中に騎士たちに会ったよ。」


「龍を1発なんて相変わらず凄いな...それに足が早過ぎないか?」


「こんくらい普通でしょ?ね。リーシャ!」


「はい。馬で1時間半の所は走れば50分で着けますね。この位は普通でしょう?」


「リーシャ殿。近衛騎士でもそんな早く走れませんよ...」


「えっ?!」


ハハハと苦笑しながらドルフェイは馬車を動かし始めた。

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