第三話 帝都では


リーシャ達が村を出た頃 城...


皇帝は平和な日々を過ごしていた。

特に大きな問題もなく、宰相から自分の執務室で報告を聞いていた。


報告が終わり、青い空を窓から見て宰相がポツリと言う。


「平和ですな...」

「平和だな...」


だが何か嫌な雰囲気がする。


そう思うが言わない。

言ったら現実になる気がするからだ。


それがどうか勘違いであって欲しいと願い皇帝も窓の外を見た。


その時


「失礼します!伝令です!」


と言う声と扉を叩く音がした。

その声はどこか興奮気味で皇帝を不安にさせる。


「入れ」

「失礼します陛下!第三近衛隊長と第八皇子サンデル殿下からです!」


兵士が手紙を2枚差し出した。


「失礼します!」


兵士が部屋を出ていく。

とてつもなく嫌な予感がして手紙を見る。

裏にはドルフェイ・フォン・センブランドと書いてあった。


「ドルフェイ殿とサンデル殿下からですか...」


宰相がポツリと言う。


「何事もなければいいがな...」


手紙を開けて中に折りたたまれている手紙を開く。


そこに書いてあったのは予想もしなかった言葉であった。


ーー陛下。シェリアンを見つけました。守り人の魔法で子供にしたリーシャという子と共に帝都に向かい陛下にご挨拶致します。


皇帝は文字が変わらないかと何度も見るが、現実を受け止めると一気に2枚目を開けた。


ーー父上!執務を終えたので城に帰ります!お土産をたくさん買っていきます!


それを見た途端皇帝は気を失いそうになった。


それには理由がある。


シェリアンと言う幼なじみとは幼い頃よく城で遊んでいた。

だが彼女が城に来ると必ず手合わせさせられる。

皇帝とて消して弱いわけではないがSSS級冒険者に敵うわけがない。

ボッコボコにされるのだが本当に疲れて死にそうになる。全身筋肉痛確定だ。


それにもう一つ。


これが一番厄介なのだがサンデルという子はいたずらっ子で、まだ11年しか生きていないくせにそのイタズラの量は他の兄弟全部合わせても足りない。

そしてシェリアンは城に来るとそのサンデルのイタズラをより壮大な物にさせる手伝いをするのだ。

たかがイタズラで花火が上がったり、自分に魔法をかけられ見えなくされたり城の応接間3室が迷路果樹園になったこともあった。


2枚の手紙を宰相に投げてよこすとバタンと椅子に寄りかかった。


「...宰相。とりあえず城から逃げようか...」


何事かと宰相が手紙を拾い上げて見る。


内容を見てはーっとため息をついた。


「陛下。ご自分のお子さんといとこでもある幼なじみが帰ってくるんです。少しは喜んだらどうです?」

「宰相こそ妹が帰ってくるんだ。もっと喜んだらどうだ?」

「あの果樹園迷路を攻略してレポートにして出したのは私ですよ...もう嫌です懲り懲りです。しかもその子供まで来るそうじゃないですか...」

「守り人で自分の子供にしたと言ってたな?あぁ大公家が荒れそうだ...」

「平和な日々が...」

「あーぁ...」



朝から2人の大人のテンションが0に近くなったのだった。



帝都 大公家屋敷ーー


「はぁ?あのバカ娘が帰ってくる?守り人魔法で娘にした子供5歳を連れて?あのバカは何をやっておるんだ?!今年はマールが10歳になって2度目のお披露目もあるのに...!」


「お父様落ち着いて...」


怒っている当主をみて苦笑いしながら落ち着かせようとしているのはロンデンヴェル大公家の長男。つまりシェリアンの兄である。


マールというのは長男の子供で今年10歳になった男の子だ。


「落ち着いていられるか!どうする...他の貴族達にどう説明すればよい...?!」

「あの子の事です。自分で迷惑がかからないようにどうにかすると思いますよ。」

「あぁ...平和な日々が...!!!」

「ははは...」


ここでも

2人の大人のテンションが0に近くなる。



帝都 冒険者ギルドーー


城や大公家屋敷とは正反対の場所があった。


「あーーー!冒険者シェリーが帰ってくる...!他の話も聞いてくれないSSS級じゃなくてちゃんと依頼を受けてくれるSSS級が帰ってくる...!よし皆!!今日は奢りだガンガン飲めぇーーー!!」


『『『イェエエエエエ!!!』』』


涙を流しながら良かった良かったとエールを飲むのは冒険者ギルド帝都支部のギルドリーダー。隣で大量の高難易度依頼の前で涙を流しながら何かに拝んでるのは副ギルドリーダー。


この2人の大人のテンションは朝から100%を超えていた。

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