第4話俺たちの性質は悪い~雅臣・七緒~
チラリと周りを窺えば目を逸らす。知ってんだよお前らが鷹を探す気なんて無いって事くらい。探す振りはしてるが真剣に探す気なんざ無いってな。
だから俺と七緒は早々にこいつ等には見切り付けたし、それなら早めに自分たちで動けるようにした方がいい。って事でサクサクと必要な事を覚えた。って言っても二人で分担したけどな。
それに俺が勇者とかウケるわ~で七緒が賢者とかなマジウケるわと互いに指さして笑った後喧嘩になったがな。
魔法とかの理論とかは読んでてよかったラノベ!!だったな本当に。循環とかそう言ったのはマジでラノベ様様だった。分かりやすかったぜ。剣にしろ元の運動神経のお陰か割と簡単に覚えた。スキルの恩恵ってのもあるみたいだけどな。
だがしかし・・・七緒が賢者って忘れそうになる件。だってアイツ物理だぞ?攻撃物理。おい、賢者オマエ魔法はどうした!!?だぞ?賢者違うって思った俺悪くない。
マジで美味しくない異世界料理をつついてチラリと七緒に視線を移す。
七緒は調べ物の結果から一心不乱に何かを紙に書き込んでる・・・所謂魔術式と言うやつだ。
俺が預かっていた鷹の持ち物から本来の持ち主、鷹臣の居場所を確定できるかもしれないって事らしい。
ただそれの計算とかがかなり複雑でもうちょっと簡易的にならないかと弄り回いしている。そういうところは変にこだわりを持ってる七緒らしい。本人には言わないが信頼はしている。軽く調べた結果は人の住む領地には居ないと言う事。
魔毒、魔素がふんだんに湧き出ている場所を示していた。それは鷹臣には危険な場所だ。アイツは体が弱いから倒れてるんじゃないかとかあっちには人が住んでるのか?一人で心細くしてるんじゃとか考えると気が気じゃない。
「っし!これでよし!つー事で雅臣、鷹臣の持ち物これに乗せろ」
顔を上げて地図を乗せた紙を差し出してくる。
「七緒それここでやらなくてもいいんじゃね?部屋でやろうぜ。お前飯どうすの?」
「あぁ?要らねえ。これ食うくらいなら残ってるエネチャージ飲んだ方がまし」
「あーじゃぁ部屋戻るかこれ下げてくるわ」
そう言って皿を手に持って片付ける為にカウンターに向かった。
俺たちが居るのは召喚した国の王宮の一画で騎士たちの詰め所にある。ここで戦い方主に剣の使い方と魔法の使い方を学んだ。他にはこの世界の地理や金とかの価値だな。後は図書館にある魔法書やら前に召喚された者について書かれた本やらを重点的に読破した・・・主に七緒が。だって俺は興味ない本は読んでも即落ちする。これが鷹臣に関する事ならずっと読める自信はある。だが今回はやらなきゃ鷹臣を探しに行くこともままならないって事で気合で読んだ。七緒に生温かい目で見て鼻で笑われたのは・・・仕方ないかもしれない。
この後は七緒と部屋に戻って術式を確かめる為に鷹臣の持ち物を使う。
すると魔法陣がうっすらと輝きだす。そして地図上を光が伝って行く・・・止まった場所は魔王領だ。魔族、亜人、魔物が跋扈していると言われている。俺たちが見たわけじゃないから何とも言えないが、いくら何でも離れすぎだろう。
俺たちのいる国からかなり離れてるんだが、国を二つほど跨いでいる。
「随分離れた所に居るな・・・でも元気そうだな」
「あ?何でそんな事分かるんだよ?」
「あぁ、それな。この光うっすらと青いだろ?危険な状態なら赤く表示されるように術式組んだんだ。結構大変だったぜ~」
「は?・・・え~流石です賢者様?」
「うむ。よきにはからえ。じゃねぇよっていうかよこのステータスおかしいだろ何回見てもよ」
「それ言っちゃぁおしまいだろ?まー俺的には合ってると思うぜ?」
「そうなんだけどな?!だけどコレってどうなの?勇者って正義の味方っぽいイメージだろ?コレってイメージ的にダメじゃね?それを言ったら賢者もそうだろうがな」
そう俺たちのステータスがおかしい。勇者とか賢者は別にいい。ただ性質だが普通だったら問題だろ?って感じなんだが別に俺たちは気にしないけどな。理解できちゃうから。
マサオミ・イヅキ
15歳
勇者・性質=悪・黒
ナナオ・アガツマ
15歳
賢者・性質=悪・闇
HPとかは割愛するが性質が悪とか黒とか闇ってヤバくね?である。
まぁその他大勢なんてどうでもいいって思ってる時点で悪で黒なんだろうけどな。知り合いでもなんでもない奴の為に命かけるってできる訳ないじゃん?俺たち日本ならまだ未成年だしやっと義務教育終わったとこだぞ?そんな俺たちに戦ってくれって頭おかしいんじゃね?って感想しか湧かないからな。
それにここには鷹臣はいないし余計に守る気にもならない。それは七緒も一緒の考えだからさっさとこの国を出る事を考える事にした。
雅臣の顔を見れば大体何を考えてるかが分かる。幼稚園年少からの付き合いだ。表情と醸し出してる空気で大体分かる。そのせいで夫婦扱いとかクラスメイトやチームメイトにされた時には笑顔でキレたな。いい思い出。
俺と雅臣は大体が鷹臣が中心だ。鷹臣の事を知ったのは俺が小学校に入る頃だ。それまで雅臣は一人っ子だと思っていた。鷹臣のたの字も出ていなかったから全く知らなかったんだ。
知るきっかけは約束もなく暇すぎたので雅臣の家に突撃かました時だ。自分たちよりも一回りくらい小柄でその頃の鷹臣はちょっと長めの髪だったから女の子だと思った・・・って言うか一目ぼれして男と知って失恋したんだよな・・・でも好きって気持ちはそう簡単には無くならなくて・・・まだ好きなんだよな・・・言わないけど。
だから気合を入れて鷹臣を見つける為の術式に色々と組み込んで元気かどうか分かるようにした物を使って調べれば魔王領とされる場所に居る事が分かった。だけど元気だっていうのが救いと言えば救いだ。
チラリと雅臣を見れば難しい顔をしてる。きっと鷹臣のいる魔王領へどう行くか。どうやってこの国を出るかを考えてるんだろう。
何だかんだ言ってもこの国の奴らは俺たちを早々に国外に出そうとは思ってないのは明白だ。ならどうすればいい?簡単だ。
「雅臣、この国の奴らを一人くらいは連れてくぞ。とりあえずは最近魔物の動きが活発になったっていう東の山の方に行くぞ」
「は?東って何言ってんだよ?!鷹のいる方と真逆じゃねぇか?!」
「だからだよ。それに、討伐って名目で外に出りゃこっちのモンだろ?見張りみたいに一人連れてきゃいいし邪魔ならその辺に眠らせてでも置いてきゃいいし暫くの間の荷物持ち位に考えときゃいい。国境超えればこっちのモンだ。迂回する事になるがぐるっと回って魔王領を目指す」
地図の上を指で指し示しながら説明すると納得の顔になる。結構そういうところは分かりやすい。
俺の質が悪いのも雅臣の質が悪いのも分かる。
だってこの世界で大切なのは鷹臣でそれ以外はどうでもいい。だから悪で黒くて闇なんだろう。病んでるわけじゃないと思いたい。
俺たちは博愛主義でも何でもかんでも助けたいって気持ちは持ち合わせてない。ただ大切な人だけ護れればいいと思ってる。だからきっと悪で黒くて闇なのは間違いではない。まぁ鷹臣には絶対言わないけどな。それはきっと雅臣も同じだろうと分かる。
地図を仕舞って雅臣を見る。
「さて、準備しようぜ雅臣。もうここで学ぶこともないし何時までもあいつ等の言いなりになる必要性を感じねぇし?ここの図書館でもう読む物も調べる者も無いからな」
「おう。ただ武器と食料、金だな・・・食料はどうにか俺たちで料理すればアレよりは旨いはずだしな」
「あぁ食事は何とかなるだろうな。それよりも武器だな・・・あんまり安物はダメだろ刃毀れとかしやすいのもダメだ。ここは鑑定さんの出番だな」
「任せた賢者!!笑いは取らなくてもいいぜ」
好きで笑い取って無いっつの!!
何でか俺の鑑定には結構色々要らん情報も付随してくる。大臣にあった時にこっそり鑑定したがうっかり笑いそうになったし後で雅臣に言ったら大爆笑だった。
アレは無い。
大臣・太りすぎアブラギッシュ過ぎ。もう少し痩せないと奥さんに離縁されるかも?好物は子豚の丸焼きだよ♡
そんな情報求めてないっての!!
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