ダイジェスト12話~13話

 <第12話 驚きのB級モンスター>

 今のミハルには二つの選択肢があった。エドワードの船でそのまま連れて行ってもらうかポータルでまったく違うフィールドへ移動するか。

 プレイヤーを導くを役目をもっているエドワードはポータルを認識しておりミハルにどうするか問いかけた。メニュー画面を開き現在のプレイヤー状況を確認するとすでに二人クリア。八十人という枠としては大きいが決して油断できないことを理解するとミハルはポータルで別エリアへ移動することに決めた。


 エドワードや船員たちに別れを告げてポータルへと入る。

 そこは海水浴を楽しむ人たちでにぎわっている海外らしきビーチだった。


「あれ、ミハルじゃん!?」


 一般プレイヤーとしてフィールドの探索ができるツバキとヤマトが先にこのフィールドへとやってきていた。


「ここはホノルルのワイキキビーチです。現実にある場所ですがかなり細かく作られているみたいですよ」


  穏やかなビーチの逆側には街が広がっている。戦いとは無縁そうな場所であったが突如悲鳴が響いた。悲鳴をあげた女性は海を指さしており見てみるとそこからは巨大な生物が今にもビーチに上がろうとしていた。

 正体は大きなサメであったがミハルの知っている普通のサメとは大きさが意外にも明らかな違いがあった。その姿に驚いているとツバキが言った。


「ダブルヘッドシャークだ!!!」 


 ツバキが見ていたB級映画に登場していたものに酷似しており弱点はないという。

 謎が深まるサメ映画の世界が気になりながらも、ミハルは目の前のダブルヘッドシャークと思われるサメをどう相手にするかを考えた。まずは人々を逃がし安全を確保するため、逃げまとう人たちとダブルヘッドシャークの間に割って入った。

 突如現れた侍の姿に人々はむしろ盛り上がってしまい収拾がつかなくなったしまう。


 すると、ダブルヘッドシャークは陸だというのにまるで気にしないように飛び上がり、ミハルに襲いかかってきた。即座に柄を握りカウンターを当てようとしたとき、目の前に人影が降りダブルヘッドシャークを海へと蹴り飛ばした。

 そこにはミハルと似た風貌で茶髪のポニーテールが特徴的なプレイヤーが立っていた。


「危ないとこだったね。と言ってもカウンターする気だったのか。なら邪魔しちゃったね。私はハルミ。あなたのことは知ってるよ。ヨハネを倒しNPCを助けるお人好し、女侍のミハル。会えて嬉しいよ」


 名前や顔さえも似ておりまるで双子のような二人にツバキは驚いていた。


 ダブルヘッドシャークは強力なモンスターゆえにハルミは共闘を提案した。

 

「私の格闘術とミハルの剣術ならきっと倒せるよ!」

「では、よろしくお願いします!」


<第13話 剣術と拳術>


 再び陸へと上がってきたダブルヘッドシャークは蛇のようにうねうねと動きながら凄まじい速さで近づいてきた。


 ふざけたみための割に想像を超える速さで来るためミハルは動揺するがハルミ果敢に立ち向かう。


「海の生物が地上で覇権を取ろうだなんて図々しいよ!」


 陸ならば地の利はこちらにあると判断したハルミは、跳躍し真上からの攻撃を仕掛けることにした。しかし、ダブルヘッドシャークは体をエビぞりさせたかと思うと地面を叩きつけ勢いよく跳躍。予想外の出来事に防御態勢を取りつつハルミは一旦着地した。


「まさか飛んでくるなんて思ってもなかった」

「恐ろしいですね。地上戦ならまだ勝機はありますけどもし水中にもっていかれたら……」

「今の私たちじゃかなわないだろうね」

「やっぱり地上にいるうちに!」


 初めて出会う二人だがお互いの所作から素人ではないことを察する。


「ハルミさんは私生活でも格闘技を?」

「うん、いろいろやってるよ」

「では、ハルミさんの反射神経と経験を信じてまかせたいことがあります」

「さんはいらないよ。それに敬語もね」

「――ハルミ、私のサポートをお願い」

「よろこんで!」


 ミハルが距離を詰めるとダブルヘッドシャークは大きく口を開け噛みつく体制をとった。その隙を狙い上あごへと突きを放つが、危険察知能力が高くすぐに口を閉じミハルの刀を咥え強靭な力で抜けないようにした。

 力では敵わずびくともしない中もう一つの頭が狙ってきた。

 その瞬間、ハルミは頭の下に滑り込み蹴り上げる。あまりの衝撃に怯んだことで刀は抜けたが、蹴りを食らった直後に抜けたためにミハルはダブルヘッドシャークと共に宙へと飛ばされる。


 お互いが一直線となり目が合うと攻撃を仕掛けてくる予感を察知した。


「イメージしろ……。地に足がついていなくても相手を切る方法を……」


 道場での稽古は想定したものでどんな窮地でも活路を見出すものだった。

 だが、その中には現実離れしたものも多く女子高生の身でやるには危険なものもあるため稽古に取り入れられてない技もある。現実ではできなくてもゲームならそれを実現できると考えたミハルは、刀を頭の上にあげて仕掛けてきたところで全体重を前へと振り斬る。


「剣術! 空天回刀くうてんかいとう!!」


  地上からその様子を見ていたハルミは笑みを浮かべていた。


「へぇ~。やっぱ私の審美眼は当たってるじゃない。こりゃ苦戦しそうだなぁ」


 一刀両断されたダブルヘッドシャークは傷口が治ると、二頭のサメとなり海へと逃げて行った。倒すことこそできなかったが撃退はできたため二人にはそれぞれ20ポイントが追加されていた。


「しょっぱいなぁ……。もっとどかっと稼げると思ったんだけど。やっぱり完全に倒せなかったのが悪かったか」

「ごめんね。私が二匹に分けちゃったから」

「いいよいいよ。私も終わったと思って追撃しなかったしね。――で、倒したことで共闘関係は終わったわけだけどどうする。ここでやりあう?」


 プレイヤーを倒せばポイントは稼ぎやすい。勝ちを狙いに行くならばここで戦った方が有利になるが、ミハルは首を横へと振った。


「ハルミがいいなら私はここでは戦いたくないかな。せっかく一緒に戦ったのに終わったら敵だなんて悲しいでしょ」

「お人好しだね。いずれは戦うのにさ。次あった時は手合わせおねがいね」


 まだまだポイントバトルは始まったばかりだった。

 

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バトルエースオンライン Soul of the sword 田山 凪 @RuNext

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