止めどない成長 1
ヒーローサイド達成目標<1.制限時間内護衛対象を防衛><2.ヴィランプレイヤーの撃破>制限時間15分
江戸時代末期を舞台にしたフィールドでヒーローサイドのレナは走っていた。
「数が多い……!」
ヴィランサイドのNPC10人に追いかけまわされ万事休す。お助けNPCにもお助けプレイヤーにも出会えていない状況でサクラに見つかってしまい一騎打ちを避けて逃げていた。
「おおっと、嬢ちゃん。ここは行き止まりだ」
橋を渡ろうとしたとき、正面から5人の侍。後ろの侍たちも合流し合計15人。プレイヤーと言えどこの数を相手するのは至難の業。
「エースストライクはまだ使えない……。斬撃で切り抜けるしかないか」
NPCたちが住むこの町であまり被害を出したくないと考えていたレナだったがこの状況を切り抜けるために敗者復活戦で使用した斬撃を行うため刃を光らせた。意を決して刀を振り上げると、屋根から跳躍し一人の男が降りてきた。
「御用改めである! 土方歳三が助太刀する」
「土方ってあの土方さん!?」
「何を驚いている。ともに国を守るために戦った仲だろう。それとも俺一人では不満か? 心配するな、みんな来ている」
「――御用改めである!!!」
男たちを挟み撃ちする形で提灯の明かりが続々とやってくる。青い羽織来た男たち、それは知らない人はいないほど有名な組織新選組だ。
「土方さん、こっちはまかせておいてください」
「その子に傷一つつけるなよ歳三! 終わったらすぐに向かう!」
新選組一番隊組長沖田総司。新選組局長近藤勇。歴史に名だたる人物が集合した。
「レナ、やつらの狙いを掴んだんだろう。どこへ向かえばいい」
「いま、この町に佐久間象山が来ています。この先の屋敷にいてそこを襲撃するはずです」
「人斬りを差し向ける気か」
沖田たちが道を開き屋敷へと向かった。
「こっちも損害は大きい。任せたぞ、歳三」
歴史上の人物が登場しているが実際このような戦いは起きていない。佐久間象山は暗殺されそのことは教科書に載っている通り。しかし、プレイヤーが介入したことですべてのバランスは大きく変化し、偉人たちが一斉に集う事態が発生。そして、それはヴィランサイドにも言えることだった。
屋敷へと到着し中へ入ると、死体がいくつも転がっておりふすまを開けた部屋に一人の侍が佐久間象山に刀を向けていた。竹笠を深くかぶっており小柄な体系。一人で全員を倒したとは到底思えないほどに華奢であった。
「来るのが早いな。予定ではまだ橋で足止めしているはずだが」
中性的な声色で二人に言った。
「人斬りの予定を壊すのが俺らの仕事だ」
「土方歳三……。正直一番厄介な相手だ。元農民であるのにも関わらず忠誠心も剣術も持ち合わせた新選組局長の右腕。それに幕末の孤独な番人レナ。これは分が悪い」
竹笠を捨てたその顔は色白で美しいラインを描く輪郭。綺麗な瞳だが光さえ吸い込まれそうな殺意があった。
「女性?」
「女だからと油断をするな。あいつは河上。人斬りだ」
「自己紹介の手間が省けた。なら、あとは事を済ませるだけだ」
小柄な体がからは想像できない圧倒的な脚力で一気に間合いを詰め土方に切りかかる。その隙にレナは佐久間象山を保護しようとするが屋根裏から増援が現れる。
「忍ぶのは性に合わない。敗者復活では直接対決できなかったけど、一度交えてみたかったのよね」
ヴィランサイドのお助けプレイヤーレベッカだった。
「次から次へと……」
「そんなあんたにさらなBAD NEWSよ。あいつが来たわ」
「あいつ?」
逆側のふすまがゆっくりと開く。
長い黒髪に袴姿、腰には一振りの刀。
「もう追いついたわけか……。サクラさん」
「そちらのお助けはまだ間に合ってないみたい。今のうちに終わらせます」
お互いのお助けNPCが戦闘中の中、プレイヤー相手に二対一の構図。再び訪れた窮地。それでもレナは力強く柄を握り剣を抜いた。
「逆光こそ勝利への兆し!」
圧倒的不利な中で戦意に揺らぎはない。
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