サイドストーリー レイラン 8

 身を隠しつつ船に乗っていると何かにぶつかり顔を上げた。次のエリアの端までやってきていた。道路に上がりエリアを眺めるとそこはレイランにとって因縁のある場所東京市街地だった。

 ため息をつきつつエリアを進んでいると光の壁が収束するアラートが鳴り響く。thirdエリアが使えなくなるということはそこで残った猛者たちも今からそれぞれの方面からforthエリアへと向かうということ。先にアイテムを漁りたかったレイランは駆け足でエリアの中央まで向かう。


 市街地エリアはまだ手を付けられてないところが多く、回復や攻撃アップ、さらに加速アイテムも手にれることができた。


「あ、これいいかも」


 携帯ショップで見つけたのはビームガン。弾数は100発あり10発ごとに強制リロード行うというもの。遠距離武器をもっていないレイランにとってはありがたい武器だったが、手に取ろうとした瞬間レイランにだけ聞こえる警告音が鳴る。デジタルグラスが開きビームガンの情報が映し出されるとここにきて新事実が発覚した。

 フィールドやエリアに落ちている武器はスタイルによってレベル制限がかけられていた。レイランの戦闘スタイルは近接戦闘を主とするスタイル。ナイフを投げたりはするが銃火器のたぐいは一切所持していないため、まったく別種の武器を持つ場合レベルで扱えるかを判定される。これは、ミハルやハルミなども同様でこの二人が銃を拾おうとすれば銃が万能であればあるほどレベルを上げる必要がある。


「レベルっておまけ程度の要素かと思ってたけどこういう時に使うのか。ってことは隠したりすることも不可能……。いや、そうでもないかもしれない」


 近くにあったポスターをはがしビームガンの上に乗せ簡易的ではあるが武器を隠すことができた。触れたり持ったりすることができないだけで上に物を置いたり箱で覆い隠したりなどはできる。位置を把握しているというだけでもそれなりのアドバンテージはあった。さらに、ほかのプレイヤーが強力な武器がある場所へ行こうとしたならばそれを妨害したりできるためより多く武器の位置を知ることも勝利へのカギとなる。


 近辺の入れる場所へだいたい入り次はスクランブル交差点が眺められるカフェの二階へとやってきた。特にアイテムが置いてあるわけでもなかったため出ようとすると外で音が鳴る。

 外を向いているカウンター席に隠れつつ交差点を眺めると二人のプレイヤーが戦っておりさらに二人増え四人の激しい戦いが勃発した。

 残りのプレイヤー数を確認するとすでに32人になっていた。見ている間に二人減りどの場所でも戦いが勃発していることがわかる。


「あまり好きじゃないけどいったん漁夫の利で行くしかないかな」


 奥で身を隠そうと立ち上がった瞬間、窓ガラスを弾丸が貫通し目の前の椅子に弾痕ができていた。

 一歩間違えていれば大ダメージにつながる攻撃。secondエリアでもスナイパーに撃たれていたためすぐにレジカウンターの裏へと逃げ込み身をひそめる。

 

「やばい、このままじゃ外に出れない。それに今の一撃に誰かしら気づいてるはず」


 しかし、交差点で戦っているプレイヤーたちはこの銃撃に誰も気づいていなかった。それもそのはず。無我夢中で目の前の相手と戦っているのだから些細な音など気づくはずはない。視点によって考える状況が大きく違うは今回はそれがマイナスに動いてしまった。むしろすぐに交差点へ飛び出て戦いに混じれば単一で狙われる危険性は低い。身をひそめてしまったことの後悔はすぐに訪れることとなる。


 店の中へと足音がなる。ゆっくりと窓の近くまで音が移動すると金属質な音が聞こえた瞬間、メニューボードや棚、レジカウンターをめがけて一斉に銃撃が行われた。

 

 銃撃が収まり店の中は穴だらけ。もちろんレジカウンターにも無数の穴が開いていた。


「仕留めたか……」


 男がそういうと店の音へと移動していく。

 すかさずカウンターから飛び出たレイランは男に向かってトンファーによる接近戦を仕掛けた。遠距離プレイヤー相手ならすぐさま接近戦に持ち込むことで有利に状況を進められると判断したからであったが、男は即座にカランビットナイフを逆手もちで右手に装備しトンファーの攻撃をいなして強烈な蹴りを腹部へと入れた。

 大きく飛ばれされた体は直撃したテーブルを破壊するほど。


「白兵戦ならば勝てると思ったか。甘いな」

「それしかできることはないんでね!」


 椅子を蹴り飛ばし隙を作ると同時に素早い攻撃を仕掛けるがものの見事に先ほど同様にカウンターを当てられてしまった。その直後、再びどこから銃撃が行われレイランの顔スレスレを横切った。

 敗者復活戦で協力するなど特はない。しかし、確実にどこかから狙うものがいる。入り口は男がいるため店から出ることは困難。近接戦闘も相手の方が上だった。


「さぁ、次はどうする」


 forthエリアで出くわした想像を超える強敵。

 次の一手をこまねいていた。

 

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