サイドストーリー レイラン 9

 カランビットナイフを持ったプレイヤーネムと隠れているスナイパーの両者に気を配らなければいけないこの状況下でいつものように戦闘を繰り広げることは困難であった。


「さぁ、次はどうする」


 椅子やテーブルの陰に隠れ姿勢を低くしながらも横目で窓の方をみた。すると、外では炎が舞い氷の柱がたつなどと激しい戦いが繰り広げられていることがわかる。


「正直、正面切って戦ってどんな相手とでも張り合えるほど私は強くはない。それは第二戦で痛いほどわかった。だけど、この敗者復活戦で戦った人たちはみんな単独で戦闘を仕掛けてくるし自身の力を信頼し戦う。私はそれが不思議でならなかった。――だってみんな敗者なんだから」


 レイランは氷の柱で景色がふさがれた瞬間にテーブルを蹴り飛ばし窓を割った。その瞬間、外から強烈な炎が店内へと噴射された。


「ちっ、外のやつを利用したな。しかし、その程度では――」


 再び銃の乱射でダメージを与えようとすると目の前には大量のダイナマイトが投げ込まれていた。これは船に乗っていた火気厳禁と書かれた箱に入ってた物。移動中に拝借し暗器で隠し持っていた。

 激しい爆発で外に吹き飛ばされるがそのおかげでピンポイントバリアのアイテムを使用して正面の爆風のみを防御。着地と同時にプレイヤー数を確認すると一人減っていた。


「といってもまだ安全じゃないよね……」


 後ろ見るとそこには新たな標的を見つけたと瞳を輝かせる血気盛んなプレイヤーたちが三人。大刀を取り出し気合いを入れ振り返り構えた。


「よーし、始めようか!!」


 forthエリアまできたこともありどのプレイヤーも戦いを熟知していた。それぞれが不利になると退いて体制を整え再び戦線に復帰。全員がここで相手をぶちのめすことだけを考えていた。

 遠距離攻撃のないレイランは若干の不利ではあったがそれでも攻撃が通ればダメージは一番稼げる。動きも他を圧倒するほどで隙を見つけることができたならば一網打尽も可能性として決して低くはない。

 

「エースストライク発動! フレイムバード!!!」


 炎を扱うプレイヤーファウダーがエースストライクを発動。体全体を炎で包みこみ火の鳥となりプレイヤーたちへ交差点を覆う炎を放った。これを防ぐ手段はレイランにはない。まともに食らえば形成は一気に不利となる。だが、動かなかった。この状況下でフレイムバードを阻止できる人間がいたからだ。


「エースストライク! アイスバーン!!!」


 氷を自在に扱うプレイヤーキルガンのエースストライク。唯一この場で対抗できる。空から迫る炎を地上から氷の放射で対抗し周りの建物は衝撃に耐えられずどんどん破損していく。それは見ていたプレイヤーも同様でそばにいるだけでダメージが付与され早く攻撃が終わらなければじり貧となり負けてしまう。

 どちらかに攻撃を加えるか検討していると建物の高さほどある巨大な斬撃がファウダーとキルガンを襲った。

 thirdエリア方面からやってきたプレイヤーの仕業である。現れたのはfirstエリアでロイドとの戦いの間に割って入った刀を扱うプレイヤーレナだった。エースストライクは巨大かつ凄まじい速さの斬撃を放つ雷光らいこう斬真衝ざんしんしょう。同時に二人のプレイヤーをリタイアに追い込んだ。

 レナはすぐさま走っていきLASTエリアへ向かった。それを追いかけるようにロイドが現れほかのプレイヤーに目もくれず走っていく。その直後、砲身が取り付けられた謎の機械が落ちてきた。これがネムのスナイパーの正体、遠隔層で操っていたのだ。


 嵐のように過ぎ去った一幕に安堵するがまだプレイヤーは一人残っていた。バランスファイターのミノル。圧倒的な制圧力があるわけでもないがバランスのいい戦闘で着実にこなしていくプレイヤーだ。


「そこのプレイヤー。決着をつけるか」

「いいけど、逃がしたほうが身のためだよ」

「あいつらのような派手な技がないからといって舐めると痛い目を――」


 言い終わるよりもさきに中国の手裏剣である柳葉飛刀を投げつけ奇襲をかけた。

 ミノルはバランスよく回避していくが突如腹部衝撃が走る。一気に距離を詰めたレイランの大刀が腹をついていた。ついでといわんばかりエースストライクの影響で舞う火花にダイナマイトを着火させ投げつけリタイアへと追い込む。


「言ったでしょ。逃がした方がいいって。まともな接近戦ならミハルレベルじゃないと負けてあげられないよっ」


 光の壁が収束するアラートが鳴り響く。

 次はLASTエリア。敗者復活戦最後のエリアとなる。

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