サイドストーリー レイラン 3
近接武器の扱いに長けた二人の戦い。
一歩も譲らぬ攻防ではあったが一瞬の隙を突かれ腹部に強烈な蹴りを入れられる。突き飛ばされたレイランの体は家の塀を壊し庭まで達した。
「あんな蹴りを一瞬で……」
威力もさることながら槍のリーチの内側に入られた一瞬で高威力の打撃を放ったことに驚いた。ロイドの長所は槍だけではなくパワーのある肉体そのものだった。それに加え槍での戦闘も常人より遥かに上なのだからレイランはどうしたものかと考えた。しかし、考える暇も与えず跳躍したロイドの突きが襲い掛かる。
「あぶなっ!」
「ちっ、避けるか。さすがにそう何回もうまくいくもんじゃねぇよな」
この一撃はさっきプレイヤーにとどめを刺したもの。言葉から高威力であることはわかったがそれと同時に間近で見たことにより想像よりも攻撃範囲も速度もないことを発見した。
「ったく。このままじゃ埒があかねぇ。時間がかかればめんどうになる。ここいらで終わりにしてやる」
ロイドが構えると槍はまるで炎のような青白い光を先端にまとわせた。
「お前は確かに武器の扱いは悪くない。力でのぶつかり合いを回避しながら的確に急所を当てようとするところを見ても優秀なプレイヤーだとわかる。だがな、お前には決定打が欠けている。それが俺とお前の違いだ」
ロイドはレイランの弱みをこのわずかな戦闘で把握していた。事実、高火力の技があったならロイドに高ダメージを与えるチャンスは二度もあったというのにそれをしなかった。できなかったのだ。
「こうなっちまったらただの武器じゃ俺はとめられないぜ!」
青白く光る槍がレイランを襲う。一撃目を何とか回避し退こうとするがロイドは執拗に追撃をする。横払いで再び飛ばされ起き上がろうとしているとこをさらに攻撃。回避が間に合わない絶体絶命。
「これで終わりだぁぁ!!」
青白い光はさらに強くなり見ただけでふれてはいけないものだとわかる。
ロイドの真剣な目は確実にレイランを仕留める意思を感じさせ一切の慈悲も存在しない。だが、こんな不利な状況下でありながら、レイランはまだあきらめてはいなかった。
ロイドの恐ろしく速い突きが放たれた瞬間、レイランは瞬時にそれを受け止め高速の連撃を食らわせる。
「なにっ!?」
「これはゲームの世界。使えるものは全部使って勝利をもぎ取る!!」
「ちっ、アイテムか! だが、使うタイミングはいつだ。さっきまで強化されていないはずだ」
「突き飛ばしてくれた時だよ。飛ばされながらアイテムを使用してあなたが来た時に攻撃しやすいように驚いた顔をすればすぐに釣れるとわかってたからね。賢さがあなたと私の違いよ」
「へっ、いうじゃねぇか。だがよ、アイテムってのは効果の有効時間に限りがあるはずだ。それまでに俺を倒せるか!」
槍同士の打ち合い。衝撃波で塀が壊れ建物が破損し電柱が倒れる。本戦以上の戦いが敗者復活戦序盤で繰り広げられ観戦している人たちを夢中にさせた。
「いいねぇ。こうやって打ち合うのを望んでたぜ。あの侍ともこうやって打ち合えたらよかったがそれは勝ってからのお楽しみにしておくぜ」
「それよりも先に私にやられちゃうかもよ!」
レイランは飛散した瓦礫を飛ばし隙を作り追撃。負けじと槍を回転させ攻撃を防ぐロイド。
だが、その時。フィールドの光の壁が迫る警告が鳴り響く。
「ちっ、もう時間か。これで終わらせる!」
ロイドは後のことを考えずにエースストライクを発動させようと構える。それと同時にレイランの強化状態が切れ再び絶体絶命。どんな攻撃を放たれたとしてもおそらく防御を突破され負けてしまう。なんとか周りから解決策がないかと考えたがアイテムは一切見つからない。
仕方なく新たな武器を展開しようとしたとき、二人の間に光の斬撃が放たれた。
「あぶねっ!」
「うわぁ!」
二人とも当たることはなかったが斬撃が通り過ぎてすぐ一人の少女が間を通り抜け次のエリアへと走っていった。
「邪魔しやがって。許さねぇ。まてこらっ!!」
「ちょっと私との勝負は!」
「そんなのあとだ! あいつだけは逃がしてやるもんかっ」
付近のエリアから移動してきたプレイヤーに運よく助けられ一安心したレイランは光の壁が迫る前に次のエリアへと移動。
次のエリアは江戸を模した町。木製の家屋や建物が混在し地面は砂のため音がばれやすい。さらなる戦いがここで展開される。
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