サイドストーリー レイラン 7
広場で出会ったプレイヤーレベッカも含め三人の戦いは激化していく。種類の違う三つのスタイルによる攻防はほかの介入を許さない。どこかで誰かがこの様子を眺めているかもしれない。漁夫の利を狙っているかもしれない。だが、そんなことはおかまいなしに三人はお互いの出せる力を全力で尽くす。
「しゃらくせぇ! これで吹き飛ばしてやる! ――粉微塵になれぇぇぇ!!!」
マニーがエースストライクを発動すると、光輝く拳がうなりをあげ拳状の衝撃波が放たれた。地面をえぐり突き進む衝撃波は建物一つを丸々覆うほどの大きさで防御をしたところで大ダメージは必至。レベッカは詠唱や特別な動作なしに身体強化の一時的強化を行い避けようとしたが、まったく足が動かないことに気づいた。
「なんだこれは! いつのまにこんな鎖が」
地面に打ち込まれた鎖はレベッカの足に巻き付き動きを封じていた。その時、レベッカの前をレイランが不敵な笑みを浮かべながら通り過ぎて行った。
「あんたの仕業ね!!」
「使えるものは全部使わせてもらうよ!」
拘束されたレベッカはそのまま衝撃波に飲み込まれた。建物は一瞬で崩壊しえぐられた道がどこまでも続く。すべてを破壊し尽くすエースストライクと思われたが、レベッカは煙をあげつつもしっかりと立っていた。その顔には無数のタトゥーが刻まれてある。
「やってくれんじゃないの。私にまでエースストライクを使わせるなんてね」
レベッカの戦闘スタイルはタトゥーを利用した魔法攻撃。衣服で肌を隠すことによりタトゥーの変化を悟られずノーモーションで様々なことが可能。
エースストライクの能力は二つのうちから選べる、一つは強大な魔力を放出する攻撃タイプ、もう一つは魔力を身にまといあらゆる攻撃の威力を低下させる防御タイプ。発動はどのタイミングでも可能な代わりに発動後は魔力を多く消費する魔法を使えなくなってしまう。
その他のエースストライクと比べ技の派手さはないが、あらゆるすべての相手にダメージを与えるかあらゆるダメージを確実に減少させるこの力は町をえぐるほどの威力のエースストライクに対してもしっかりと有効であり、体力を半分で抑えた状態でマニーの技を完全に耐えきった。
「これじゃ打ち損じゃねぇか」
マニーのエースストライクは自身の体力の割合で威力が変化する。体力が満タンの場合は威力ゼロ。半分なら相手の体力を6割もっていき、体力が残り3割状態で放つと対象の体力が満タンじゃない限り瀕死状態に追い込める。この時のマニーは3割の体力。意図的に減らすすべをもっておりあえてここまで減らしたのだが、レイランはノーダメージでレベッカは半分、エースストライクを見せてしまった代償としてはかなり割に合わない。
「こっからはあたしの番よ!」
服を脱ぎ棄てノースリーブとなり肌のタトゥーが変化していく。
「これを見せたのはもうあんたらはおしまいだってこと!」」
すでに魔法によるマーカーをマニーとレイランに打ち込んでおり、二人に火球を打ち込んだ。火球はマーカーを導として二人を追尾。接触するまで追い続ける。
マニーは火球の餌食となり体力は残り僅か。レイランは空中で武器を放ち相殺するが爆風で川へと落ちてしまった。
「あっちはあとで追いかけるとしてあんたはここで仕留めてあげる」
動きの鈍くなったマニーに近づき魔法を放とうとした瞬間、屋根の上から大量の爆弾が降りそそいだ。
「まずいっ――」
避ける間もなく爆風に飲み込まれレベッカは大きく吹き飛ばされる。マニーはリタイアとなった。
屋根の上に潜んでいたプレイヤーが降りてきて状況を確認し始める。
「へへっ、あいつも逃げやがったか。ならもう一人を追いかけるとしよう」
そのプレイヤーはジョーカー。漁夫の利を得意とし爆弾やトラップ、銃火器を扱い場を混乱させることに長けている。その反面正面での戦いはそこまで得意ではなく、相手の隙をつくスタイルだ。
川に落ちたレイランを探しに行くが姿はなく。仕方なくジョーカーはあきらめレベッカの追跡に切り替えた。
そのころ、レイランは道中で見つけたボートに乗り川伝いに次のエリアを目指していた。
「ふぅ~、案外みんな船には着目してないんだよね」
プレイヤーの残り人数は39人。マニーの攻撃に巻き込まれた者もいるがほかの場所でかなり激しい戦いが行われていることがうかがえる。次のエリアはforthエリア。戦いを制した者たちが集まるため、さらなる猛者たちと対峙することになる。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます