天の裁きは硝煙の先に 3
「さぁ、君はどんな決着を望む」
「俺とお前は同じリボルバータイプ。そして、ここは西部の町。だったらやることは一つだろう」
クリントは左腰の銃を捨て右手に持っている銃の弾を残り一つになるまで落とした。さらに自身の体力を8割減らし銃をホルスターに入れた。
「西部劇の如く一発で決めようというか。……面白い」
クルセイダーは背を向けて銃を一丁捨てると華麗な回転しながら残りの弾を捨てホルスターに銃を入れた。サングラス越しでも伝わる気迫に満ちた眼光がクリントを突きさす。
二人は何を合図にするかも言わずに右腰のホルスターの横へと手を運び構える。
乾いた風が吹きすさび砂が舞い上がって天へと昇る。
ミハルたちはその姿を固唾を飲んで見守っていた。
「ミハルはどっちが勝つと思う?」
今まで黙っていたツバキが口を開いた。一度助けられた経験があり勝ってほしいという気持ちはもちろんクリントへと傾いていた。
「正直わからない。でも、万全なクリントさんがあえてピンチな状態を作り出しってことは、この戦いが一番性に合っているってことじゃないかな」
「勝機があるじゃなくて性に合ってる?」
「ロマンみたいなものだよ。私にもそういうのあるから。抜刀術、これは私にとって
ここぞというときに最後まで裏切らないから」
「なんだかそういうの素敵だね」
二人のそんな会話を横で聞きながらヤマトはある違和感を覚えた。それはクリントがアイテムを使わず自分の武器を使わずに体力を減らしたこと。そこに何かがあると考えていた。
約二分が経過していながらも二人の集中力はいまだ最高の状態を保っている。この一撃にすべてを賭けた戦い。その感覚は同じかに思われた。
しかし、この状況においてクルセイダーだけは余裕をもっていた。先ほど後ろを向いた際に攻撃を一度だけ無効にするアイテムを使用し万全な状態を作り出していたのだ。さらに、弾を一つになるまで捨てたように見せかけていたが弾倉にいまだ全弾装てんされていた。
神の裁きと称しお互いの雌雄を分けようという場面でもクルセイダーは狡猾で確実な戦いを行おうとしていたのだ。
風が止み始めついにその時が迫る。
このことを知らないクリントはどんな見せかけも使っておらず体力も弾丸もギリギリ。この一撃を外せば勝機はない。すでにクルセイダーの勝ちが決まった戦いにいまだ最後の一撃をぶち込むためにその時を待っていた。
「風が止むよ」
ミハルの言葉通り風はピタリとやんだ。
それと同時に二人はホルスターに手をかけ一斉に弾丸を放つ。この時、ミハルはクリントのほうが早いことに気づいたがそれと同時にクルセイダーがもう一度トリガーを引こうとしているを確認した。
「クリントさんあぶない!!」
つい叫んだ言葉は銃声と共に響き渡る。
静寂が支配する中、倒れたのはクルセイダーであった。動揺隠せずこんらんしているが誰の目からでもわかる。
「な、なぜだ……。私は確かに……」
「お前が何かを仕込んでいたように俺もやらせてもらった」
「何をした…………」
硝煙の漏れる銃口を一息し、答える。
「これが俺のエースストライク。ラストガンショット。ルールを理解したプレイヤー同士の一撃は先に当てた方が確実に勝利する。発動条件は自身の体力を条件達成の値まで減らすことさ。いつでも発動できるがその代わりどちらかは確実に倒れる」
「くそっ……アイテムが効かないわけだ……。――天の光は君に微笑んだようだな」
エースストライクの攻撃はアイテムの効果を上回る。
クルセイダー、リタイア。
ここで第二戦が終了した。
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