天の裁きは硝煙の先に 1

 ポータルで次のフィールドへ向かうとそこは古き良き西部開拓時代のアメリカ。

 草木は少なく乾いた風が吹く中、誰もいない町に到着した。


「まるで夕日のガンマンだ」

「それってゲーム?」

「いえ、古い映画ですよ。西部開拓時代のガンマンを主人公にした作品です」

「ほんとヤマトくんは物知りだね。にしても誰もいないみたいだけど」

「いや、プレイヤーの気配がビンビンするよ」


 フヨウは忍者としての能力ではなく直感でそう判断したが、見事にその直感は的中していた。

 酒場から一人の男が木扉を開けゆっくりと現われた。

 黒い衣装に白髪、腰には二丁のリボルバー。隙だらけの姿にミハルは警戒心をとくに抱かなかったがフヨウが耳元で小さくささやきいった。


「抜刀の準備くらいはしてて。ただものじゃない感じがする」


 道の中央までやってきた男はゆっくりと口を開いた。


「この私を前にして臆さず立ちふさがる姿、まさしく侍といったところだろう。しかし! 私は天より舞い降りた死神! 迷える子羊を天に返し裁きの時へといざなうのが運命。その命、もらい受ける!!」


 男はリボルバーをミハルへと向ける。

 先の戦闘でツバキの盾は使用不可能。ヤマトが銃を出すには間に合わない。フヨウは自分一人だけなら簡単に逃げられたが三人を逃がすほど余裕はなかった。


「天へは送ろう。裁きの時まで祈れ!」


 二丁のリボルバーはタイミングをずらして発射された。これはミハルにとってまずい状況でもある。矢や投擲ならまだしもスピードのある弾丸では抜刀で一つは防げてもそのスピードを維持しながら二つとも防ぐのは至難の技。

 だが、ミハルに選択肢はなく抜刀術で一つの弾丸を切断。すぐに二つ目に切りかかろうとした時、弾丸はあらぬ突如軌道を変えてあらぬ方向へと飛んでいった。


「いつかは来ると思っていたがようやくか」


 ミハルたちが後ろを向くとそこには第一戦で助けてくれたクリントの姿があった。


「また会ったな。それに今回は一人増えて楽しそうじゃないか」

「前回助けてくれた――」

「クリントだ。気まぐれで君たちを助けたが俺の目的はあいつだ。ここは譲ってもらおう」


 ミハルたちの前に出たクリントは白髪の男へとリボルバーを向けた。


「うちの二人はあいつにやられたのさ。急いで作ったチームで特に愛着もない仲間だが、敵討ちくらいはして置かないと俺の気がすまないんでね」

「それはお互い様だろう。私のチームも君のせいで二人やられた」

「なら、ここで決着をつけるとするか」

「面白い。天の裁きを受けるのがどちらか。決めようではないか」


 ミハルたちは邪魔にならないように近くに隠れ様子を伺った。





 

 

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