第23話 森へ行こう

 森は太陽の光が届きづらくなりひんやりとした空気と木の実や花の匂いがふんわりと漂っている。

 軽快に進んでいくレイランとは対照的にツバキは最初の勢いがなくなり不安げな表情を浮かべていた。


「大丈夫?」

「う、うん。まさかこんなに感覚がリアルだなんて思ってなかったらちょっと驚いちゃったよ」

「姉ちゃん森とか苦手だからな」

「この辺、ミスチェフテンタクルスがいるから気を付けてよね。油断してると連れていかれるよ」


 ミスチェフテンタクルス。いたずらな触手。

 外部から入ってきたモンスターや人間をツタに似た触手で捉えてそれを餌にしつつ大型なモンスターや救出に来た人間たちを襲う植物型モンスターである。

 肉食ではないため実際に食べるわけではないが疲弊し一歩も動けなくなるまで襲うのをやめない。

 

「私だってさすがに気を付けてるよ。それにいざとなれば私の武器が大活躍するからね。――ってうわぁ!!!」


 ツバキが声を上げたため全員後ろ振り向くがそこにツバキの姿はなかった。しかし、声をあげながらツバキが引きずられていく音が聞こえ全員同時に状況を理解した。


「くそっ、姉ちゃんめいきなり連れ去られやがった!」

「早く追いかけないと!」

「足の速さなら私にまかせて!」


 レイランは華麗に木々をかき分けながら音のする方向へと走っていく。その軽快な動きはハルミと似ており体全体をバランスよく使うさまは格闘技や武術のそれである。


「すげぇ……。ゲームの世界だとあんな動きができるのか」

「私たちじゃ真似できないね」

「とりあえず同じ方向に向かいましょう。ついでにレイランさんの戦いも見れるかも」


 二人の下へと急いだ。


 一方、ツバキは引きずられながらも器用に木々や岩を避けてなんとか耐えしのいでいた。


「スカートめくれちゃうからもっとゆっくりしてよ! もう!!」


 悪態をつくくらいには余裕であった。

 その瞬間、クナイのような形状をした剣である匕首が四本飛んできてツバキの足に絡んでいる触手を切断した。

 勢い余ってごろごろと転がり木に頭を強打した。


「いったぁ……くははないけど衝撃が本物みたい」

「案外余裕そうじゃない」

「あっ、レイラン! 助けに来てくれたんだね!」

「チームだからね。それより早くここから離れないと。また触手が襲ってくるよ」

「うわっ、それは勘弁!」


 ツバキとレイランは徐々に迫ってくる触手から逃げるため森を駆けた。

 しかし、この時レイランは重要なことを言い忘れていた。

 自分が重度の方向音痴であることを。


 


 

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