第20話 さすらいのガンマン

 突如現れた男のポイントは250。対してミハルは190。このまま長期戦となればミハルはポイントのノルマを達成できずに第一戦敗退となる。

 短期決戦に持ち込みたいが一般プレイヤーを盾にされポイントを没収されるリスクがつきまとい刀には迷いが見え始めていた。


「あれだけの観衆の前で勝利を飾った侍を倒すのはこの俺ガイだ! よく覚えておくと言い。どれだけ卓越した技術でもツールさえそろえば簡単に超えられるってことをな!!」


 ガイには卓越した技術はない。しかし、数多のツールを扱うことでプレイヤーを凌駕し卑怯な手段も平気で行う。

 それこそが彼の美学。最後に笑うためには過程や手段は問わない。


 ミハルは攻撃を仕掛けるたびにめくらましか盾の二択を迫られる。普段のミハルならこの場を凌駕することも可能かもしれないが連戦続きの今のミハルでは一歩先に進むことができない。

 ツバキたちでさえもミハルの動きが単調になっているのには気づいていた。


「このままじゃ負けちゃうよ」

「打開策があれば」

「あの盾をどうにかしないと。――あっ! 攻略法分かったかも!」

「おい、姉ちゃんどこ行くんだよ!」


 ツバキは何かを思いつくとミハルたちの方へと向かっていった。


「侍、こちとらまだ本気を出してない。見せてないツールがたくさんあるんだ。もっと楽しませろよ!」

「くっ……」


 黒い刃がミハルを襲おうとした時、ツバキが手を広げて間に割って入った。


「なに!?」


 ガイは予想外のことに驚くがギリギリで攻撃を止めた。


「そっちが盾を使うならこっちだって盾を使えばいいわけだよ! まさか卑怯なんて言うわけないよね~」

「へっ、考えやがったな。だがなんで二人いるか考えろよ」

「えっ?」


  ツバキがすっとんきょうな顔している間にもう一人の仲間がツバキを捕まえ拘束した。


「ごめん、捕まっちゃった」


 形勢は一瞬にして元通り。残された枠は5人。すぐにでも決着をつけなけなればならない局面。ミハルは刀を持つ手に力を入れ再び立ち向かおうとした時。


「言っただろう! まだ本気を出していないってな!」


 ガイの腰の装備から二本のワイヤーが飛び出し刀を握る手を拘束されてしまう。

 ワイヤーを斬ろうとすると光により目くらましされ続けてビームガンによる攻撃。体力も残り少なく体が重く動きづらくなる一方。

 

「ここまでなの……」


 ミハルが諦めかけガイの刃が再び襲い掛かる。

 その瞬間、一発の銃声が鳴り響く。

 それと同時にガイの武器を地面へと落としその隙にワイヤーを切った。。


「誰だ!!」

「――お前みたいなやつに名乗る名は持ち合わせていないさ」


 夕日に照らされるシルエット。

 銃口から溢れる硝煙を息でかき消しその人物は姿を現した。

 カウボーイの恰好をしたその姿はまさしく夕陽のガンマン。


「別にその子を助ける義理はないがたまたまに目に入ったんでな。俺はあんたよりそっちの嬢ちゃんと戦いたいのさ」

「邪魔をしやがって! お前ら! 盾になれ!」


 銃弾のまっすぐな軌道を防ぐの仲間を盾にすればたやすいこと。直線にいるその人物からすればこの時点でガイを撃つことは難しい。


「俺に小細工は通用しないぜ」


 シングルアクションのリボルバーが四回火を噴いた。

 銃弾は的確に一般プレイヤーの頭へ二回ずつヒットし一瞬にしてゲームオーバーへ。


「お前なにやってるのかわかってんのか! これでマイナス200だぞ!」

「問題ない。俺は480ポイントもってる。まだクリア圏内だ」

「なんだと……!?」

「――侍少女! 俺に合わせろ!」


 そういうと男は銃弾を放った。銃弾はガイの脳天に直撃し大ダメージを与える。ガイの体力はまだ残っており抵抗の意思を見せているがすかさずミハルが一閃。

 ミハルの全力の一撃はガイの体力を完全に削りゲームオーバーとなる。


「く、くそがッ! ここまできてこんなやつに!!」

「欲が出たのが運の尽きだ」


 ガイとその仲間の一般プレイヤー二人はゲームオーバーのため強制退場となりフィールドから消滅した。


「あ、あの! ありがとうございます。おかげで助かりました」

「気にするな。俺は俺のしたいことをしただけ。礼を言われるようなことは何もしていない」


 男はそのまま立ち去ろうとするがミハルはそれを止めた。


「名前を聞かせてください。いつかこの借りをお返しします」

「言うじゃないか。俺の名はクリント。次は敵かもな侍少女」

「ミハルです。私の名前はミハル」

「その名、覚えておこう」


 そういうとクリントは去っていった。

 ギリギリのところでクリア圏内に入ることができたミハルは無事に第二戦への出場が決まった。


 待機所に戻ると画面にはポイントランキングごとに第二戦の参加者が発表されていた。多くは200ポイントきっちりでクリアをしているが今回のミハルやクリント、それにマキナなどはランキングの上のほうに掲載されている。


「あ、ハルミがいるよ!」


 ランキングトップ5には共にダブルヘッドシャークに立ち向かったハルミの名が載っている。最終獲得ポイントは420。二位までは僅差で並んでいた。


「なんだあいつ。とんでもなく強い奴がいる」


 ヤマトが見たプレイヤーの名はノア。最終獲得ポイントは800。

 詳細は発表されていないが多くのプレイヤーと多くのモンスターを倒さなければそのポイントまでは到底届かない。


「先が思いやられるねミハル」

「でも、楽しくなってきたよ。どこかふわっとした気持ちでやってたけどやっぱり負けたくないと思ったし、どうせなら優勝を全力で狙いたい」

「その意気だよ! わかんないことがあったらなんでも手伝うよ!ヤマトもね

「俺もかよ!!」


 こうして無事に第一戦ポイントバトルが終了した。

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