第14話 侍と騎士
次なるエリアへと移動した三人の前に広がる光景は西洋ファンタジーに出てきそうな街並みのエリアであった。以前、ミハルの来た場所と似ているがそことはまた違うエリアのようだ。
「待っていたよ。まさか侍少女とはね」
ポータルを出ると早速一人の女性に声をかけられた。
金髪に鎧を着ており凛とした姿はまさしく騎士。ヤマトとツバキはいきなり現れたゲーム的な人物に喜びと驚きの表情をみせていた。
「えーっとあなたは?」
動揺しつつもミハルは女騎士に尋ねた。
「私はマキナ。強いプレイヤーが来るのを待っていた」
ノンプレイヤーキャラクターだと思っていたその人物はまさかのプレイヤーであった。
すると、ツバキがいぶかし気に聞く。
「もしかしてミハルと戦いとか?」
早い者勝ちで次の戦いへと進むことができる第一戦ではプレイヤー同士が出会えば戦いライバルを蹴落とすのは定石。
先ほどのハルミはたまたま共闘するということになったが、それは二度も続くとはないとさすがのツバキも考えていた。
「確かに初戦の戦いの強さを見ていたら実力が伸びる前に倒しておきたいところ。だが、今回は違う。私と共に強敵と戦ってほしい」
まさかの二度目の共闘の誘いであった。
マキナはすでにポイントを稼いでいるがこの先も順調に稼げるかを疑問視していた。そこで高得点を狙うために強敵を探していると、このエリアで見つけたのだが一人では勝てないことに気づき、ポータル前でプレイヤーが来るのを待っていたという。
「まさか侍少女に会えるとは思っていなかったがこれは好都合。君の力と私の力を合わせればやつも倒せる」
「やつってどんな敵なんですか?」
「私と同じ騎士のNPC。武器は槍。リーチが長く素早い攻撃は一人で捌くの至難の業だ。でも、二人ならば相手の隙もつける! ぜひ私と共に戦ってほしい!」
マキナはすでに120ポイントを稼いだプレイヤーであり実力の高さがわかる。
「ちなみにそのNPCを倒すとどれくらいポイントがもらえるの?」
「200ポイントだ」
驚愕のポイントの高さに三人は驚いた。
プレイヤー二人分のポイントであり第一戦を通過するために必要なポイントをたった一人のNPCで稼ぐことができるのだ。
「高得点ゆえに強敵だ。おそらく元々一人で倒すのではなくレイド用のボスキャラクターではないかと思われる」
レイドという言葉にミハルは聞き覚えがなく、ヤマトのほうへと視線を向けた。
「レイドというのは複数人で一体の相手を倒すみたいな感じです。最初から複数人を相手にしていることを想定してるためその辺のモンスターなんかとは比べ物にならないはずですよ」
「強敵か……」
負ければその時点でリタイアとなるこの戦いでは、無理に強敵と戦わず細かくポイントを稼ぐほうが安全に勝利することができる。
それはミハルも理解していたが内に秘めた侍の魂が沸々と熱を発しており、この戦いに強い興味を感じていた。
「ミハルの好きなようにしたらいいんじゃない。ゲームって楽しむのが本質でしょ。だったらやりたいことをしたら楽しいでしょ」
ツバキのその言葉はミハルの背中を強く後押しした。
「わかった。――マキナさんと共に戦います!」
ミハルは強敵と戦うことを選んだ。
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