第15話 深紅の騎士
街にある闘技場に向かうとそこには赤い短髪に赤いマフラー、それに胴体や肩、ふとももに赤い鎧を身に着けた男が立っていた。
「へぇ~、助っ人呼んできたわけだ。後ろ二人は戦いに来た雰囲気じゃないな。ということはそっちの刀をもった嬢ちゃんか。だが、そんな嬢ちゃん一人増えたところで何が変わるってんだ?」
ミハルを見るなり男は嫌味ったらしく言葉を吐いた。
「私の助っ人にケチをつけるな。能ある鷹は爪を隠す。見た目に惑わされると痛い目を見るぞ」
「言うじゃないか。――俺の名はラーシュ。深紅の騎士ともいわれてる。東洋の剣豪、名を聞かせてもらおうか」
「ミ、ミハルです。お願いします」
今までたくさんの稽古を積んできたミハルであったが男の雰囲気には血の匂いを感じた。ゲームのNPCなのにも関わらず発している雰囲気は現実と大差ない。
マキナはその様子を見てミハルの審美眼の鋭さに感心していた。
(まさか見ただけでこいつがただものではないと察するか。鋭い審美眼だが裏を返せば臆病な可能性もある。いざという時に刀を振れるか見ものだな)
ミハルの動揺した挨拶に男は大きく笑う。
「東洋の剣豪と聞いてあきれるぜ。刀を持てば変わるタイプか? なんでもいい。とっとおっぱじめようぜ!」
「来るぞミハル! 構えろ!」
「は、はい!」
ヤマトとツバキは戦いの邪魔をしないように観客席に移動。
「ねぇ、ヤマト。ミハルたち勝てると思う?」
「わかるわけない。でも、ミハルさんのセンスはすごく高いからいい線は行くと思う。あとはあのマキナって人とどれだけ力を合わせられるか」
前回のダブルヘッドシャークと違い今回は人型のNPC。
見た目のインパクトは前回よりも劣るがミハルたちよりもリーチがあり倒した際のポイントもラーシュのほうが上。必然的に難易度も跳ね上がっているということになる。
「来ないならこっちからいくぞ!!」
ラーシュが踏み込むと一気にミハルの近くまで距離を詰めてきた。
あまりに速さにミハルは動揺を隠せていない。マキナも自身が戦った時よりも俊敏な動きに援護が間に合わずこのままではミハルは槍の餌食になりかねない。
「真剣抜くなら死の覚悟ぐらいしときな!」
高速の一撃が襲おうとしていた。
ミハルが防ぐのは間に合わない。せめて体力が残ってくれという三人の思いを裏切る事態が発生した。
甲高い音が鳴り響き三人は目の前の出来事に驚いた。
「……悪いけどこっちも伊達に鍛えてないよ」
そこには刀で槍を反らし鋭い眼光を飛ばすミハルの姿があった。
「へへっ、そうこなくっちゃ」
ラーシュが余裕をこいていると、ミハルは槍を弾き自ら距離を詰めて超近距離からの斬り上げで攻めた。
「おっと!」
ラーシュは力強く地面を蹴り斬り上げが触れる前に跳躍し最初の位置へと戻っていった。
「大丈夫か?」
「はいっ! いけます!」
難を逃れたミハルをみてツバキたちはホッと一安心。
それと同時にラーシュの異常な強さを実感することになった。
しかし、ミハルは驚きの発言をする。
「マキナさん、少しだけ私一人にやらせてもらっていいですか」
「な、なにを言ってる! さっきの動きを見て一人では危ないことくらいわかっただろう!」
「危なかったのは私だけじゃないですよ」
ミハルは刀の先端を見せた。
そこにはラーシュの赤マフラーの切れ端が引っかかっており一同は驚愕した。
「な、いつのまに!?」
ラーシュは自身のマフラーを見ると確かに先端の布だけが切れていた。
「斬り上げの途中で避けられるのがわかったからマフラーを狙ったんです。そしてこれは警告です。あなたの速さは私にとって大した壁ではないということです!」
攻撃は発生時点で何を狙うか決まっており終了までにその動作が変更されることはまずない。
放たれた槍はまっすぐに突き、振られた剣もまた線を描くように斬る。
それは攻撃発生直前の際すでに行動が決まっており、発生途中の刹那に思考をする余裕がないからだ。
しかし、ミハルは攻撃の発生中にさえも軌道を変化させる思考の速さと剣術を兼ね備えていた。
それを理解したラーシュは不敵に笑い喜ぶ。
「いいぜ……まずは一対一だ。そこの騎士よりも楽しませてくれよ」
「では、いざ尋常に」
『勝負!!』
二人は同時言葉を発し刀と槍が交わった。
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