第二章 魔王様と宰相様と魔族たち
第22話 グルルルル
グルルルル
ギャルルルル
グルガルグルウウゥゥゥ
地底から響くような低い低音。そうかと思うと、獣の甲高い咆哮にもきこえる。
「なっ、なんなの」
秘書官のショコラは先ほどからずっと鳴り響く得体のしれないこの音にすっかり尻尾をまたの間にしまいこんでしまっていた。
他の同僚たちも同じように、不安そうな顔をしている。
「ちょっとショコラ、宰相様のところに行って状況を確認してきてくれない?」
「なんで私が──」
「いつもなら喜んで宰相様のところに書類持っていくじゃない、物怖じすることなく宰相様と話せるのはあなたしかいないのよ」
ショコラはここ最近率先して宰相のところに足を運んでいた。未だに宰相が何を考えてるか分からないと、仕事以外の会話などしたことがない同僚たちからみたら、サインをもらうまで宰相のところで待っていてもよいかと言ったショコラはもう宰相専属秘書といってもよいとさえ思える。
それにはじめこそ仕事熱心なことだとただただ感心していたが、最近では実はショコラは宰相に気があるのではないかと秘書室の中ではもっぱらの噂だった。
そんな噂など露知らず、「まぁこのさいあの二人の様子も気になるし」と、その要件を承諾したショコラ。
(エリザベスさんには悪いけど、これも仕事。やましい気持ちで、今二人がどんな状況か見に行きたいなどと思ってはいませんよ)と、心の中で言い訳をしながら部屋を出ていく。
その横顔が緩んでいるのをしっかりと同僚たちに見られていて、そして自分たちの推測は間違っていなかったのだと、さらに見当違いの確信を深められているなど思いもせずに。
「あれ? なんか、寒気が……気持ち悪……」
廊下に出たショコラはあまりの気持ち悪さに思わずその場にしゃがみ込んでしまった。
(なにこれ? なんか目が回……る……)
一旦部屋に戻ろうとしたが足に力が入らない。すると廊下の先でギルガメシュの声が聞こえた気がした。
「ギルガメシュ様──」
言葉にしたはずのそれは音にはならず。そしてショコラはそのまま意識を手放した。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます