第21話 魔王様とお花見
「今日はいい天気ですね」
ギルガメシュはそういうと魔王の寝室の窓を開け、暖かな春の風を部屋に入れた。
「そうだな、もうそろそろお花見の時期だな」
そういえば魔王様もお花見が好きだった、というかみんなでどんちゃん騒ぎをするのがお好きな方だったななどと思い出す。
「お花見をしたら目を覚ましてくださるだろうか……」
宰相のそんな呟きにギルガメシュの目がキラリと光る。
「準備しましょう」
そうして始まった宰相主催お花見大会
「なんで大会なんだ」
いつのまに作ったのか看板を見上げながら宰相が眉間に皺を寄せる。
「だいたい主催って……」
最近やたら経費の領収書が回ってくると思ったらこれに使われていたのか。
秘書に聞いても、大丈夫ですというからサインをしていたが、全員グルだったのだな。確かに魔王様が健在の時はよく、お花見だ、花火大会だ、球技大会だと、やたら魔王主催のイベントをやっていたものだ、魔王が眠った後は初代牛男たちが小規模ながら幹事をしてくれたが、代が変わるにつれ自ら主宰をしようという魔族は減り、いまではほとんど催し物はなくなっていたことに気が付く。
「宰相様! こっちです」
ギルガメシュや秘書たちが大きな桜の木の下で手招きをしている。
流石に眠ったままの魔王を連れてくるわけにはいかなかったが窓を開けているので、みんなの騒がしい声は聞こえるはずだ。
陽気な声に誘われて目覚めてくれればいいのだが。
「皆さま、宰相様の挨拶が始まるのでお静かに」
ずっと仕事部屋と魔王の寝室を行ききしかしてこなかったので、これだけ大勢の魔族の前に顔を出すのは久方ぶりだ。
区別はつかないが、自分が最初に集めた魔族の子や孫なのだろう、若い子たちが多い気がする。
(あぁ。守らないと)
いつ勇者たち人間がこの平和な魔界に攻めてくるかわからない。
今の魔族は全盛期に比べその魔素量が極端に少ないものが多い。
「えぇ、この度は──……」
魔族たちの笑顔の間に桜の花びらが舞い落ちる。
(早く起きてください魔王様。みんな待ってますよ)
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます