第5話 牛男正規採用決まりました

「えらいすみませんでした」


 深々と頭を下げる牛男。


「体調はもう大丈夫なのか?」

「おかげさまで」

「そうか」

「まさか、女魔禁制だったとはしりませんでした」

「初代も随分昔のことだったし忘れていたのだろう」


 宰相もついこの間まではそこまで敏感になっていなかったので、強くは言えない。


「へい、次あっしになにかあっとときは違うやつに任せますので」

「…………、ちなみにお前は魔王様を見てどう思う」

「へぇ、若く見えて実は長老だったんだなっと」


 いやそういう話ではないが、そうだそのこともついでに釘を刺しておこう。

 宰相が咳ばらいをする。


「この間、魔王様が若返る一族だと話した話。あれは他言無用だ。そして私が不老であることもな」

「へぇ」


 どうしてですか? とは口にしないだけましだった。


「わかったな」

「わかりました」

「話を戻すが、そういうのではなく、なんていうか、魔王様のビジュアルはどう思う」


 牛男が顎に手を当て考える。そしてちらりと宰相を見る。


「正直に話せ、お前たちが白と黒の毛がない者たちをどう思っているかは知っている」

「そうですか、なら、言わせていただきますが、あっしにはよくわかりません。はっきり言って、魔王様や宰相様の違いは髪の色とツノの形でしか判断できないもんで、あっしにはたぶんそれ以外の区別があまりわかりませんので、いいとも悪いとも」


 上目遣いででかい体を縮こませながら答える。


「うむ、合格だ」


 しかし宰相からの予想外の言葉に目を丸くする。


「合格?」


 いままで不合格だったのだろうか? 


「そのままお前は魔王様の世話をしてくれ、だが体をぬぐうのは私がやる、そうだな、お前は部屋の掃除をしたり、あとは私に届いた書類を受けとって私の元に持ってきたり、役人に渡したりできるよう常に扉の前に待機していろ」

「わかりました」


 よくわからないが、とりあえず祖父から受け継いだこの職を手放さなくてよかったことに牛男は喜んだ。

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