No.11:「朝食の準備ができましたよ」


 翌朝の8時。起床時間だ。

 僕は目を覚まして、隣のすみかさんに声をかける。


「すみかさん、起きましたか?」


「ん……今起きる」


「寝てるんですね。僕は今着替えるので、そのまま寝てて下さい」


 僕は先に起きて、パパッと着替えた。

 キッチンに回って、湯沸かしポットに水を入れスイッチを押す。

 フライパンを火にかけたら、トースターに食パンを2枚セットする。


 フライパンに卵を二つ落とす。

 目玉焼きなら簡単だ。


 すみかさんが、ようやく起きてきた


「翔君、おはよう」


「おはようございます」


 すみかさんは着替えを手に持って、トイレに向かった。

 トイレで着替えるんだろう。

 それはそれで、ちょっと面倒じゃないかな?


 マグカップを2つ出して、インスタントコーヒーを入れる。

 洗ったレタスをちぎって、大きなお皿に盛り付ける。

 その横に目玉焼きとトーストをのせた。


 ちょうどそこへ、すみかさんがトイレから出てきた。

 黒のブラウスに、白のパンツ。

 うーん、今日は大人の女性だ。


「簡単ですけど、朝食の準備ができましたよ」


「うわー、ありがとう! 今まであんまり朝食なんて食べてなかったから、感激だよ」


「朝は食べないと、元気が出ませんよ」


「なんだか翔君、お母さんみたい」


 二人で笑いながら「いただきます」と言って食べ始めた。

 一緒に食べる人がいると、同じ食べ物でも美味しく感じるんだな。

 今まで一人だったから、わからなかったけど。


 食事をしながら、僕たちは今日の計画を立てた。

 すみかさんは家具屋さんのリトニに行きたいらしい。

 リトニは電車で15分ぐらい行ったところ。

 ちょっと離れている。


 それ以外にも、100均とドラッグストアにも行きたいらしい。

 なのでその2軒を先に行って、一旦戻ってくることにした。

 そうしないと、リトニの家具を持つのが大変だからだ。


 それはそうと、僕は1つ気になることがある。

 すみかさんのベッドだ。


 すみかさんのベッドは、部屋のコーナーにある。

 頭側と右側の2方向は壁についている。

 左側はカーテンで仕切っている。

 ところが足元の方向は、なにも仕切ってない。

 キッチンから、丸見え状態なのである。


「足元もカーテンで仕切りましょうか?」


「いいよー、お金かかるし。それにあそこで全裸になることは、ほとんどないでしょ。だから大丈夫だよ」


「でも、着替えるとき下着姿になるじゃないですか」


「んー、下着は着衣だから、翔君ならギリセーフかな。見られても」


 でも見ないようにしてね。特に足は見ちゃダメ……だそうだ。

 多分、僕は試されてると思う。


 10時前に、僕たちはアパートを出た。

 100均とドラッグストアは、駅前にある。

 歩いて10分とかからない。


 最初にすみかさんは、ドラッグストアに入った。

 僕はそのお店の並びにあった合鍵屋さんで、玄関のスペアキーを作ってもらう。

 スペアキーを受け取って、ドラッグストアに戻る。

 すみかさんの買い物かごには、いろんなものが入っていた。

 シャンプー類、ボディソープ、化粧品等々。

 それからコンタクトレンズの洗浄液も入っていた。


「コンタクトレンズだったんですね」


「そうなの。本当は1Dayタイプがいいんだけどね。高いから2weeksにしてる」


 いろいろと大変だな。

 幸い僕は視力はいい方だ。


 すみかさんは、レジで支払いを済ませる。

 買ったものが入った袋を、僕が持つ。

 結構重い。


「翔君、ありがとう。助かるよ」


「大丈夫です、お姉さま」


 僕がおどけると、すみかさんは「ふふっ」と笑った。


 今度はそのまま、100均のソーダイへ向かった。

 収納小物とか、小さな鏡が欲しいらしい。


 ソーダイに入って、すみかさんと一緒にいろいろと見て回る。

 最近、このあたりも外国人観光客が多くなった。

 ここはそれほどメジャーな駅でもないのに、それでもよく見かける。


 文房具のコーナーで、外国人のカップルがいた。

 僕が見ても、何か困っているか探しているような雰囲気だ。

 すると、すみかさんが彼らに近づいた。


「Hi, are you OK?」


「Oh, well, we’re just looking for……」


 すみかさんは、そのカップルと普通に英語で話し出した。

 その発音が、ネイティブと全く遜色ない。

 まるでもう一人のすみかさんが、表に出てきたような感じだ。


 3人は日用品の方に移動した。

 僕も後をついて行く。

 彼らが探していたのは、突っ張り棒だった。


 彼らはすみかさんにお礼を言って、別の売り場へ移動した。


「さすがですね」

 僕は声をかける。


「ん? まーあれぐらいはね」

 少し照れるすみかさんは、やっぱり可愛いお姉さんだ。

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