「集団心理だよ。顔の見えない匿名性。その上、皆もやっているという安心感。そこから起こる錯覚……しかし、三割も掃除に関する投書があったとはね。結果は良い方だと思うよ」
「そういうものなんですか?」
「二割あれば良いと予想していたからね。ほら、二対六対二だろう? いくら僕でも、美化委員がどう思われているかは、わかっているつもりだよ。八割は悪戯されると思っていた」
「……」
「悲しそうな顔だね、ハトちゃん。もしかして、すべてが要望書だと思ったのかい? 君は、本当にいい子だね」
「私は、そんなんじゃ……」
言い淀み俯くと、頭の上に優しく手のひらが置かれた。
その手はとても大きく温かくて、どこかほっと安心してしまった。
「じゃあ、そんないい子のハトちゃんに一つ、お願いがあるのだけれど」
「お願い、ですか?」
「ああ。今から僕に付き合ってもらえるかな? ドッペルゲンガーの調査をしたいのだけれど」
「え――」
私はぱちくりと瞬きをして、そうして改めて思い知るのだった。
この倉科将鷹という男は、美化委員の仕事に積極的な、優秀な二割で。
そして法則の六割に位置する私を引っ張る、パートナー様なのだということを。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録(無料)
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます