会いに行く
二人の言葉に私は焦る。急いで帰った方がいい?
「アルテ! 戻りましょう! って、まだ白い」
崩れ落ちている彼は、「もう、負けでもいいか……、ここに?」とか呟いている。立ってー、立ってよー、アルテー!! 負けるって何と勝負してるのよ?!
「帰りますよ、アルテ!」
「まあ、もう少し、挨拶とかしていってよ」
ユウが笑いながら言う。
「この世界は何度も巻き戻る。この人達はまた元通りに開始まで巻き戻ってまた始めるんだ。だけどさ、この時間は一回だけなんだよね。だから――」
「え…………」
そっか、この世界はゲームなんだ。私達がプレイした一つのデータってだけ?
「皆、忘れちゃうの?」
「そうだねー。まあ、だから何が起こっても大丈夫とも言えるんだけど」
「そんな……」
とても寂しい。せっかく、好きと言う事が出来たエメラや、親から離れられたメイラ。他人に決められた道から自分が選んだ道を進める事になったルミナス。
エリーナに、戻って欲しいって言ったアルベルト。
皆、忘れて、元に戻ってしまう?
「エリナ様、大丈夫です。私達は、この時間を忘れません」
メイラが笑う。
「エリナさん、ありがとう。私は、もう大丈夫」
エメラがまっすぐに見てくる。
「ボク達は、いつも一緒にいるよ。アルテ、いやダイスケ、頑張れ」
ルミナスがぷくくと笑う。
「エリナ、僕はエリーナを幸せにする。必ず」
アルベルト、居たね。そういえば。頑張って、実行してね。
「オレも居ますよー、アルテ、料理談義楽しかった。またどこかでやろう!」
ザイラが歯を見せながらいい笑顔を浮かべる。
「帰ったら、気をつけて下さい」
アナスタシアが言う。
「……色々あるが、頑張れ」
「うん、頑張って!」
グリードは、色々を教えてくれない。アナスタシアも頑張れって、いったい何を!?
ふわりと飛ぶ精霊達が三人、仲良く手を繋ぎながら私のほっぺたに軽いキスをして、笑う。
私の可愛い子ども達。そっか、キミ達ともお別れなんだね。
「さぁ、宝石を合わせて。むこうはいつでも戻れるみたいだよ」
ユウが急かす。
「アルテ、戻ろうよ」
崩れ落ちている彼のところにしゃがみこみ、手を差し出した。
「エリナ……、あぁ、そうだな」
あれ、またデジャブだ……。私は前に、こうやって手を差し出して、誰かと――。
二人で立ち上がり、彼の腕が、私の髪飾りに近付いてくる。大きな身体が目の前で、なんだか距離が近くて恥ずかしい。
でも……これで、さよなら……なんだ。
私は
「会いに行く」
「え?」
「すぐに会いに行くから、待ってろ」
「え? あの……」
私が、戸惑っているのに、彼は容赦なく宝石を重ねてきた。
「ちょっと、まだ、あ、皆! さよなら!!」
笑い声とさよならが遠ざかり、私は
「夢が覚めちゃった……」
眩しい光が消えたあとは、いつもの私の部屋。
ただ、少しだけいつもと違う感覚がある。
「いつ覚めるの? なんて思ってたのになぁ」
いつか、乱暴にあつかったせいでくたくたになった枕を手に取り、よしよししながら、私は自分のベッドに横になった。
『会いに行く』
彼は確かにそう言った。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます