色々ある
「あはは、そっか。でもさ、エリナちゃん、月城く……アルテさんの事が好きなんでしょ?」
急に小声になったアナスタシアが顔を寄せ、耳元で囁く。
「え、あ、その、……」
アルテの事が好き。だけど、私は――。さっきの話を聞いたばかりで頭の中が混乱してる。答えていいの? だって、彼女は月城君のことが好きだって言っているのに……。
私が困っているのを見て、アナスタシアはふふっと笑う。
「――いいよ、私、もう諦めた。エリナちゃんなら、負けてもしょうがないよ。こんなことした私でも、友達だって言ってくれるなんてさ」
勝てないよと呟いて、アナスタシアは私から離れる。
「ごめんね、月城君。エリナちゃんをあなたから引き離そうとして――。あと、頑張ってね。帰ったら、けちょんけちょんにされるみたいだけど」
崩れているアルテにクスクスと笑いながら声をかけて、アナスタシアはグリードの立つ場所に行く。そして、グリードにさっきの返事をした。ただ、肯定でも否定でもなく、
「七瀬君、返事は、待ってもらってもいいかな。私まだ――」
とても、曖昧な答え。けれど、それを聞いたグリードは、微笑んでいた。
「いいよ、待ってる。佐藤さんが、いいって言ってくれるまで」
「……、私が断るって思ってないんだ」
「ん、しつこいよ? オレ。絶対好きって言うまで諦めないから。だからさ、戻って、オレの好きな佐藤さんに」
「……ありがとう」
二人が、宝石を重ねる。
え、今戻るの? ちょっと、色々まだ聞き足りないんだけど!!
「先に、逃げさせてもらうねー! 悪役は逃げ足もはやいんだから」
悪役って!! アナスタシアはゲームの主人公なんですけど。いつの間に悪役になっちゃったの?!
前に見た様に、光が二人を包み込み、すぐにそれは静かに消えていく。
「帰ってきました?」
「……あぁ、元の身体だ」
二人は確かめるように、手や身体を見ている。
「あの、二人は?」
「私はアナスタシア」
「……グリードだ」
どうやら、もとの人物に戻ってしまったようだった。
◇
「まったく、好き勝手して、困ってしまうわ」
「あまり人の事は、言えないだろう」
元に戻ったという二人は、仲良さそうに話している。
やっぱり、その……向こうで何かあったりしたんでしょうか。一応攻略キャラクターとヒロインよね。
あ、もしかしてむこうでナホの身体だった、アナスタシアなら、何か知っていないだろうか。私の現在の状況を!
「あの、向こうの私、大丈夫ですか?」
聞くのが怖いけれど、気になって仕方がない事を聞いてみた。
「……エリーナのことか?」
「エリーナだけどエリナさんではありませんか?」
「……そうか」
二人はこちらをみて、ふぅとため息をつく。
えっと、私が何か?
「色々ありますが、大丈夫です」
「あぁ、色々あるが大丈夫だ。強く生きろ」
二人は遠い目をして微笑んでいた。
「待ってください! 色々って何ですかぁぁぁ?!」
むこうの私、いったい何が起こっているの!!
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