他の人がいるのに
「そうか、なるほど」
キラキラした大きな宝石みたいなものをじっと見つめる私達。これはサンスコーンから取り寄せたという、
「ルミナスに渡さないとだな」
ひょいと持ち上げ、下からも見てみるアルテ。宝石を通った光が彼の顔に小さな虹を作る。
「……日時は、もう少しお待ちをとのことです。やらなければいけないことが出来たとか」
「そうか、まあこっちも探し物があるからちょうどいいな」
腕輪を見つけないと、アルテ一人の操縦は危ないもんね。場所がわかってるんだから、きっとすぐ見つかるはず。
アルベルトのやることが終わるより先に見つけなきゃ!
「じゃあ、さっそく探しにいくか。なんだかんだ、久しぶりになってしまったしな」
トレジャーハントはそういえば、久しぶりな気がする。何でだろう、あんなに夢中だったのに、今はそこまで頑張らなくていいやって思ってしまう。
見つけなきゃ、いけない。だけど――。
◇
「さすが、この国の最強魔術師だっけ? すごいな」
「……たまたま、相性がいい日だっただけだろう」
謙遜しているけれど、やはりダンジョンの時はグリードがいると攻略がすいすい進む。私、アルテ、グリードの三人で今日からダンジョンに行くことになった。
今日のダンジョンは土トンネルの中。まるでモグラにでもなった気分が味わえる。
ちなみにボスはというと……。
「また跳ぶぞ! そこ避けろ」
「了解!」
「いてぇ!」
大きなウサギ型のモンスター。サングラスをかけて悪そうな見た目。跳び跳ねて、石が飛んでくるのと、どこからか人参を引っ張り出してきて投げつけてくる。ちなみに、人参がふってきて、やられたのがアルテ。
もー、ウサギさん、食べ物を粗末にしちゃだめだよー!!
「あと三本ほどだと思います」
「そうか!」
「本当なのか?」
全力で攻撃を避けつつ、私達はウサギが人参を投げ終えるのを待っている。
この子は十本人参を投げると、もうない!? と、キョロキョロして逃げていくのだ。
「よっし、これで最後だな」
最後の一本をアルテが半分に切り落とす。
ウサギが決まり通りにキョロキョロして、逃げ道からぴゅんと走って逃げた。
「よかった。これでお宝ゲットだ」
アルテのところに行き、手を引っ張る。あとついでに、人参アタックを受けたところをウィンディーネで治してあげた。
「……エリーナ様、何故あのようなことを知っていたのですか?」
近寄ってきたグリードからそんなツッコミが入って、ぎくりとしてしまう。そういえば、彼には説明していなかった。ただのお嬢様が、ここのことに詳しいって、おかしいことだよね。
「……家を出て、まだ数日。その日からここがこのダンジョンになるのは、これが初めてのはず」
「あ、えっと、その……」
うわぁぁ、何も考えてなかった。そうだ、私、何、グリードの前で思いっきりゲームのネタバレしちゃってるんだー!
答えられずにアワアワしていると、アルテが助け舟を出してくれた。いや、助け舟と見せかけたどろぶねだったかもしれない?
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