愛の精霊の選んだ答え

「順番で公平性を問われても困るからね」


 という訳で、お城に戻りました。四人が並び、同時進行で精霊契約の作業中。

 うーん、やっぱり、くすぐったい。


「それでは、始めます」


 あ、えっと、愛の精霊だから愛をイメージするのかな? んー、よくわからない。声は聞いたけど、マナ様の姿は結局見ていないのよね。うーん、愛って? やっぱり……。


 石がきらきらと光を放ち始める。他の三人も光っていた。


 ポンッ


「わわっ」


 私の目の前には、アルテみたいな緑色の髪の、頭に小さなお花をつけた私にそっくりな小さな女の子がいた。


「これは、植物の精霊……ドリアードみたいですね」

「ということは、違うの?」

「ですかね。にしても、ふふ、緑色の髪のあなたそっくりとは、まるで二人の子どもみたいですね」


 ルミナスに笑われながらそう言われて、ボンっと頭から蒸気が飛び出した気がした。だって、愛っていったら、結婚して、それから……。一人、赤くなっていると、横の三人も次々と精霊が姿を見せた。


 ポンッ


 真っ黒な姿の精霊が、


 ポンッポンッ


 小さな天使が二人、同時に姿を見せた。

 真っ黒な精霊は、ソフィーの前に、二人の天使みたいな精霊はメイラとホークの前に。


「あは、あは、あはははは! 私、私が選ばれましたのね! だって、マナ様は一等賞だけと仰っていましたもの!!」


 喜ぶソフィーだったが、誰も手を叩かない。


「何故、誰も何も言わないのです? 私が選ばれたのですよね? 誰か、何か仰って下さい!」


 コツリと、王妃が一歩前に出た。


「マナ様の気まぐれなのですかね……」

「王妃様! 私、選ばれました! さぁ、ルミナス様と婚約を――」


「……マナ」


 王妃が、呟くとふわりと二人と同じ天使のような精霊が姿を見せた。


「私の負けのようですね。認めましょう。その二人がルミナスの婚約者です」


 目を伏せ、王妃はさがりもとの場所に戻る。王の隣へと。


「ありがとうございます」


 ルミナスは笑いながら、少しだけ困っていた。まさかの、二人だもんね。ホークなんて、真っ赤っかのあわわわわってなってるし、メイラはそれを見てクスクスと笑っていた。


「納得出来ません!! 私は!」


 ソフィーが叫ぶ。


「何故、私ではないのですか?! こんなにもお慕いしていますのに!! こんなの!」


 目の前にいた精霊を叩くつもりなのか、彼女は手を振り上げる。


「駄目!」


 飛び出したのは、シャルロッテだった。彼女は精霊を庇ってソフィーに叩かれた。


「精霊は悪くない。いじめちゃ駄目よ、ソフィー。精霊から恨まれたら、この国では」

「――うるさい! アンタなんて、あの椅子に座るためだけの踏み台のくせに!!」


 わーーっと泣き出したソフィーをシャルロッテはゆっくりと見て、笑っていた。


「知ってる。ごめんね、ちゃんと話聞いてあげればよかったね。うわべだけしか見せてくれなかったもの……。私も一緒。私のことばかりだった。マナ様が認める訳なかった。ごめんなさい」


 言葉がずきりとささる。私のことばかり……。


「この精霊もまた、マナ様からの贈り物なのでしょう。大事にして下さいませ」

「私は……」


 ソフィーとシャルロッテは、騎士に手を引かれて、どこかに歩いて行った。


「友達って難しいのかな……」


 ポツリと言った言葉に、近付いてきたアルテが反応する。


「難しくなんてない。喧嘩も仲直りもやらないとやり方がわからないからな。おもいっきり、やりあうのもいいんじゃないか」

「……なにそれ」


 私はふふっと笑ってしまった。おもいっきり喧嘩かぁ。ナホと喧嘩なんてそういえばしたことなかったな。

 ナホと私、ずっと一緒だったけど恋バナは私のことしか、話した事なかったっけ……。このゲームの好きな相手とかは話してくれていたけれど……。

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