ラッキー?アンラッキー?
『………………』
沈黙が流れる。あの、痛いんですけど。誰か、何か言ってくれませんか。
私が恥ずかしさで固まっていると、サラマンデルがメイラの上でぴょんぴょんと飛び跳ねたらしくメイラが声を出した。
「きゃっ、何ですの?」
メイラは私の位置から後ろにいるので振り返ると、そのまた後ろにホークが近付いてきていた。その手には、首飾りを持っている。
まさか、メイラにかけるつもり?
私は急いで魔法を使おうとするが、どう見ても間に合わない。
『あら、もう一人参加者みたいね』
マナの声が響く。
その声を聞いたホークはギクリとして、その場で止まった。
『さぁ、どうぞ。あなたも愛を語って下さいな』
おどおどと困るホーク。その視線はソフィーに向かっている。
くるりと後ろを向いたメイラはホークと向き合い、手を叩いた。
「まあ、やはり来てくださったんですね。さぁ、はやくしてくださいな。エメラ様。あなたが最後です」
メイラは嬉しそうに笑っている。エメラ? ホークの名前なのかな。
「何を言ってるの! エメラ! 部屋から出なさい!」
ソフィーが歯ぎしりをしたあと、叫ぶとホークはピンと背筋が伸びた。
「申し訳ございません。今――」
『あら、駄目よ。その扉しまってるし、まだ聞いてないわよ、愛。邪魔するなら……ねぇ』
マナの声が、ドスのきいた低い声になるとソフィーはまた歯ぎしりをして、押し黙った。
ホークはキョロキョロといつもの冷静そうな顔が思い出せない程に焦っている様だった。告白前の子どもみたい。
「わた、……私は……」
三人から注目され、彼女の顔が赤く染まっていく。ありがとう、私のあとにきてくれて! これで帳消しよ!
なんて、思ってたのは秘密なのだけれど、あのホークが真っ赤になって困ってる様はなかなか可愛いものだった。これ、ルミナスに見せてあげたいなぁ。
「私だって、……ルー君のこと大好きなんだから。ずっと一緒にいるために……こんなに……がんばっ……ひっく」
ビー玉みたいにきれいな青い瞳からボロボロと涙がこぼれ出した。どどどどど、どうしよう。泣いちゃった。
『ふふふ、これで全員ですね。それでは、結果発表しまーす!』
マナが嬉しそうに話し出しすと、上から赤い紙吹雪みたいなものがひらひらと落ちてきた。何これ、演出?
『全員合格ーって言いたいのだけど、それじゃあ、困るでしょう。だから、今から渡すものが私からのプレゼント。一等賞の人だけが私の精霊石よ』
「え……」
四人の目の前に光る小さな石がそれぞれ落ちてきた。ふわふわと浮かぶそれを私はそっと手にとる。
精霊の契約で使ったみたいな石だ。
『それじゃあ、出口にご案内! また次の子達も素敵な言葉が聞けるといいな!』
◇
「エリナ!」
「アルテ」
どうやら入り口に飛ばされたらしい。入った時のように、ソフィー陣営、メイラ陣営勢揃いで立っていた。
「エメラ! それを渡しなさい!」
ソフィーの怒声が響く。彼女がホークに命令していた。
「エリナ、その剣、ホークのだな」
小さな声でアルテが聞いてくる。私はこくりと頷くと、アルテが剣を掴み、ルミナスに向けた。
「ホーク、お前の主は誰だ! そいつか? ルミナスか?」
「私の剣をルー君に向けるな!!」
言うがはやいか、ものすごい勢いでホークが飛んできて、アルテから剣を奪い返す。すごい、跳躍力。
「わかってるじゃないか! ほら、言うことはないのか?」
ルミナスの前で赤い顔をした彼女は、困ったようにうつむきながらぼそぼそと答えた。
「ルミナス様、昔の呼び方をしてしまい申し訳ございません」
かーっと言いながら、アルテは頭を押さえてそれを見ていた。
ルミナスはホークの手を掴み、手のひらをあけさせる。
「これは、精霊石だね。他の三人も?」
「はい」
「マナ様からもらいました」
ちいさな歯ぎしりのあと、ソフィーもそれを見せる。
「城に戻り、契約をしよう。これはマナ様のご意志だ。交換したり奪ったりすれば国が滅ぶぞ!」
「「「はっ」」」
護衛達まで返事をする。さすがにこれで、手は出せないかな。
それにしても……。
私はアルテに近寄って、手を繋いだ。それから、こっそりと聞いた。
「今のダジャレじゃないよね」
「あのなぁ」
くくくっと笑われてしまった。だって、マナの話をしたあとにまあなぁとか石もらってご意志とか、狙って言ってるようにしか聞こえないよぅ。私の耳が変なの?!
私がぶつぶつ文句を言っていると、アルテが頭をくしゃりと撫でてきた。
「お帰り」
「……ただいま。大丈夫だった?」
「あぁ、上から女の子がいっぱい降ってきたくらいかな」
「…………そうですか」
彼的にラッキーだったかアンラッキーだったかは、聞かないことにしよう。
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