同じ意見でよかった
「次は何ですの?」
扉を開けると、五人の護衛の子達がそこに座り込んでいた。
邪魔する気かと警戒するが、誰も立ち上がろうとはしなかった。
「何ですの……」
「あれ……」
五人は皆足を押さえている。ケガでもしているのだろうか。
「どうします?」
「通らなければ次に行けませんし、様子を確認してあげるくらいはよいのではないですか?」
私達は、警戒しながらも、五人の女の子達が座り込んでいる場所に歩いていく。そして、見てしまった。
血は出ていないけれど、刃物で切ったような傷が彼女達の足にあることを。
「かまいたち……?」
たしか、風の妖怪の仕業でそんなのがあったような。
「足手まといは不要と置いていかれたのでしょう――」
「かな……」
このまま、放っておくことも出来るけれど、こんなところにケガをしたまま置いていくのは、気分が悪い。
「ねぇ」「いいですか?」
私達は同時に声をかける。
「あ、お先にどうぞ」「あなたこそ」
これはこのまま譲りあっていると先に進めないヤツだ。そう思い、私は先に言わせてもらう。
「ケガを治してあげてもいいですか?」
メイラは、じっと私を見た後ふぅとため息をついた。
「同じ意見で良かったです。面倒になるかもしれませんがよろしいですか?」
「その時は、その時で」
良かった、ゲームではあまり接点がなかったからメイラがどんな人なのかよくわからなかったけれど、意地悪な子ではないみたい。
私達は頷きあって、五人に近付く。
「シルフ、何か起こりそうだったら、お願いね」
念のため、シルフにお願いしておいた。
「この者を癒せ、ヒール」
「ウィンディーネ!」
二人同時に魔法を使う。そうか、メイラは王族だから使えるんだ。
「何をする!」
「なっ!?」
足の怪我が消えて、二人の女の子が驚いた顔をする。
「私達の怪我を治して、怖くないのか?」
いや、かかってこられると正直嫌だし怖いですよ。
「それは、怖いに決まってますわ。けれど、置いて行って何があるかわからないのに、首飾りを外す命令をしないままにされているあなた達を放っていくのは私達には出来ませんわ」
はっきりと発言するメイラはアルベルトの妹だなと実感する。正義感があって、しっかりしていて、判断もはやい。流石だなと思う。ただ、この彼女は親の溺愛という殻を脱ぐことが出来たからここにいるのかもしれない。
関わる人次第で、きっといろんな未来があるんだろうな。
「さぁ、あと三人ですわね」
「いや、もういい」
そう言って、立ち上がった一人が首をふった。
「どういうことですの?」
メイラが聞くと、立ち上がった一人以外がふっと姿を消した。そこにふわふわと色んな色の光が浮かんでいた。
「私達は最初の場所ですでに脱落している者達の姿をとっていただけのここにいる精霊だよ」
「え?」「あら……」
「あぁ、大丈夫。本物達は今頃外にお帰りいただいてるから」
その言葉を聞いて、私達はホッと胸を撫で下ろした。
「まあ、甘い選択だけど、私達は嫌いな選択じゃないし合格にしてあげる。こっちだよ」
そう言って、どこからともなく現れた扉を指差した。
「先にきた子達は凄いね。容赦なかったよ。まあ、不利益を見極める残酷さは時に必要だし、強さでもあるから合格して次に進んだけどね」
「そうですか。ここは心の強さを見る場所ということですか」
「まあ、そうだね。次も頑張って」
ふりふりと手を振る彼女はいつの間にか姿を消していた。
「上に立つには非情にならなければならない事もありますものね……」
なんとなく、アルベルトを思い出す。彼は、とても悩んでいた。ヒロインか、ライバルか。非情になりきれなくて、辛かったかもしれない。まあ、あの「どっちも僕の花嫁!」は私、お断りだけどね。やっぱりはっきりしてあげて欲しいよ。この世界じゃ、常識が違うかもだけどさぁ。
ヒロインではなく、ライバルだけを見てあげて欲しいな。なんて思うのはわがままなのかな。
「エリナ様」
「あ、ごめんなさい。行きましょう」
扉を進むと、今度は三人が立ちふさがった。一人はホークだ。
「ここから先へは行かせません」
剣をスラリと構えて立つ彼女からはまるで真剣勝負前の剣士のような気迫を感じた。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます