別攻略キャラ

「連絡にもでないな……」


 アルテの家に戻って、連絡をいれたようだけど反応がなかったみたいだ。

 ハイエアートを置いて、ルミナスの家に向かったけれど、誰かがいる様子がない。帰ってない?

 アルテはかなり焦った顔をしていた。友達が行方不明って心配だよね……。

 あ、私もアナスタシアに連絡とれてないや――。連絡のこと全然考えてなかった。心配してるかな。


「すまんがリリーナ、またここで待っててくれないか。すぐ戻る」

「うん」


 ルミナスの家の玄関前でぽつんと置いていかれた。

 私は不幸が訪れる気配を事前に察知するため身構えて待っていた。

 だけど、それはまったく意味をなさなかったらしい。

 私は急な眠気に襲われてしゃがみこみ、眠りに落ちた。


「こいつも仲間か?」

「さっきのやつとずっと一緒にいただろ」


 どこか遠くで話すような声を聞きながら。


 ◇


「リリーナ、リリーナ」


 あれ、その声は――。

 聞き覚えのある声にゆっくりと目を開ける。私、いつの間に寝てしまったんだろう。

 あれ? 手が動かない。足も……。


「良かった、気がつきましたか」

「あれ……ルミナス」


 バッと頭の中がはっきりと覚める。

 私の手と足はぐるぐる縛られていた。そして、ルミナスも同じようにされている。ただ彼は追加で首に首飾りみたいなのがついているけれど。練習の時はつけてなかったよね?


「これ、いったい何が……」

「すみません。ボク達のことに巻き込んでしまったかもしれません」

「え?」

「アルテが、気がついてくれるといいんですが」

「さっき、探しにいったんです! 急にいなくなったから、ルミナスの家に行って。そしたら、眠くなって何故かここに――」


 そうだ。私、さらわれた?! そして状況からルミナスが先にさらわれてて、同じところに放り込まれた?

 アルテと離れてたら私、不幸が……、これがもう不幸……?

 あー、それどころじゃないかっ!とりあえず、


「逃げなきゃ――。ってこれじゃあ動けないですよね……」

「そうだね。ボクは精霊も封じられてしまっているし――」

「封じられている?」


 ルミナスは首を下にクイと動かす。その下にあるのは首飾り?


「これに封じ込めの魔法がかけられているんだと思う――。精霊達が反応してくれないから――」

「あれ、それなら――。シルフ!」


 私には、それがかけられていない。つまり呼び出せる! ちびアルテちゃんがふわりと姿を現した。風でかまいたちみたいにしてこの拘束を――。

 そう思ったけれど、ルミナスが小さく首を振った。


「現状を変えると厄介かもしれません……。ボクは魔法が使えなくて、しかも何もわからないのですから」

「うっ――、じゃあどうすれば」

「その子にアルテのいる場所まで飛んで行って貰うというのは? きっと近くには来ているはず……。この場所を伝えて欲しいと。アルテが来てくれれば心強い――」

「やってみます。シルフお願い」


 こくりとシルフが頷き、風になって何処からか出たのか姿が消えた。どうか、すぐに会えますように!


「それで、ルミナスさんは心当たりはあるんですか?」

「犯人の?」

「はい」

「たぶんね。一応、殺されはしないだろうけれど――。ほら、こんなに丁寧に梱包されてるし」

「ぷっ」


 笑っちゃいけない真面目なシーンなのに、梱包なんて言葉が出て来て笑ってしまった。

 ルミナスが少し笑っている。もしかして、安心させるためにわざと面白くいったのかな?


「リリーナには手を出さないように、相手にお願いしますよ。しっかり……」

「そうですか」


 この口振りだと、相手方のことがわかってるみたいだ。そうだよね。始末したい相手なら、こんな回りくどいことなんてしないだろうし――。


 ドンッ

 ガシャァーーーーン


 何かを壊すような音が響く。何だろう?


「アルテが来た?」

「そうかもしれませんね」


 少し遠くから男の人の怒鳴りあう声が響く。あれ? 一人、聞き覚えがある声だ。ん、でも、あれ? アルテの声は聞こえない。

 ドンガシャンと何度か音をさせながら、ようやく静かになった頃、コツコツといい靴音をならしながらある人が私達の前に姿を見せた。この人は――。


「あなた方が囚われていた方々ですか? 私はアレンという者です。女性がさらわれる現場を目撃しまして、助けに参りました!」


 聞き覚えがあるはずだ……。颯爽と現れたのは、攻略キャラの一人。えっと、確か騎士見習いのアレン……だよね?

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