アレン
茶色の髪、茶色の丸い瞳で小型犬のような印象の男の子が目の前にきてしゃがみこむ。拘束を解くためだろう。
「ありがとうございます。貴方お一人で?」
「はいっ! 私の住む街は違う場所なので、ここの知り合いがほとんどいなくて。遅くなって申し訳ないです。大丈夫ですか?」
二人が喋っているのを横目に私は声を出せなかった。
この人は、まさか私を探しにきたのでは? 誰に頼まれて? と、頭の中でぐるぐる考えていた。私だって気がついてるのかな……?
私がこの世界に来てからは全然関わりがなかったけど、知ってるはずよね……。王子様の元婚約者だもの。
ルミナスの拘束を先に解いているのは、いざという時の保険(男手)だろうか。ルミナスを解き終わると、アレンはこちらを向いた。
「恐怖で声がでませんか? 大丈夫です。私は――」
「彼女はボクが」
そう言って、ルミナスが私の前にきてくれた。
「あぁ、すみません。配慮が足りませんでした」
そう言って、アレンはルミナスに剣を貸していた。
うん、素直で優しい、いい子なんだよね。この子。でも、だからこそ何故この街にきていたのかが気になる。
ルミナスに拘束を解いてもらい、私の手足も自由になった。赤く擦れているところはあとでウィンディーネにお願いしよう。
「犯人はどうしましたか?」
ルミナスがアレンに問い掛けた。
「あ、えっと、家の外に放り出して――」
「リリーーーナーーーーーー!」
とても聞き覚えがある大きな声が響いてきた。あれ、もしかして。
「お前が犯人かぁぁぁぁ!!」
「なっ、えっ?! 誰ですかぁぁぁぁぁぁ――――」
大きな熊さんが、小型犬君に突撃をかました。そして、小型犬君はいきなりの突進に耐えられず、ぱたりと気絶してしまった。
「あーぁー」
「あー」
私とルミナスはあーしか言えなくなってしまった。
「大丈夫だったか!? リリーナ! っとルミナス!」
アルテの頭の上に小さなアルテが乗っていて、二人揃って同じ顔で私達を見ていた。
◇
「俺は二人を心配してだな……」
「わかってるから、きちんとこの人に謝って下さいよ」
大きいのと小さいのが揃ってしょんぼりしている。君たち、仲良しですね。
あの後、外を見たが人は誰も見つからなかった。面倒になる前に戻ろうと、私達はアルテの家に向かっている。
倒れたアレンをアルテがおんぶして、その横に私は立っている。ルミナスはその隣。大きな二人が私をサンドイッチしている。
うん、二人に挟まれたらさすがに、小さい。小さいな! 私!
「コレは持っていって大丈夫なのか?」
「うっ…………」
ギクリと反応してしまう。アルテとルミナスは私の頭の上で何やら目配せしているように見えた。
「コレの目が覚めて話す時は、どっかに隠れてろ。家に戻ったっつっといてやるから」
「お願いします」
さっきもだけど、ルミナスもアルテも察しがいいなぁ……。私が何か隠してるのに気がついてて庇ってくれてそう。
「そうだ、さっきアルテとだいぶ離れてたけど、不幸らしい不幸に会わなかったんだけど?」
「あぁ、俺が腕輪に二人の無事をお願いしたからかな?」
そっか、そんな使い方があったのか。
「じゃあ、これからずっと無事でありますようにってお願いしてみて!」
「ん、やってみるか。これからずっとリリーナが不幸に見舞われないようにしてくれ」
私はアルテの手を離して、歩き出す。すると、いい感じに目の前に小石があった。何だってーーー!?
パッとアルテが手を繋ぎなおした。
「そこまで都合がいいもんじゃないらしいな」
「みたいですねぇ」
アハハッと笑ってから、私はアルテに笑顔でお礼を言う。
「ありがとう、助けにきてくれて。無事をお願いしてくれて」
それを聞いたアルテは、少し微笑んでみせ、言う。
「良かった、無事で――」
アルテの金色の瞳が、優しく揺れていた。
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